お辞儀

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お辞儀(おじぎ、英語: bow)とは、挨拶や感謝、敬意などを表すために、相手に向かってを折り曲げる動作である。単に「辞儀」とも言う(「お」を付けるのは「お金」や「お酒」と同様、美化語である)。

男性に向けて足に触れるお辞儀をする女性
ラウルチャンダ写本。インド 1530年

地域におけるお辞儀

東アジア

東アジア地域ではお辞儀は伝統的な挨拶、お礼、謝罪の行為であり、特に日本と朝鮮半島及び中国の一部地域で顕著に見られる。中国ではお辞儀は長い間一般的ではないが、北朝鮮との国境に近い地域などでは朝鮮族に対してお辞儀をする。

日本

 
お辞儀
伝統的なお辞儀の仕方

日本のお辞儀には、座った姿勢で行う「座礼」と、立ったまま行う「立礼」の二通りがある。

武家のお辞儀は、鎌倉時代の武家政権樹立以来、洗練され培われてきた。武家の礼法には「左進右退」(座礼の途中でもいつでも刀を抜けるように、左手・右手の順で畳に手をつく)、あるいは「下進上退」など、和服で髷を結って帯刀している前提なので、現代のマナーにはそぐわないものも多く、近代化に従って簡略化されていったものも多いが、武道の流派にはこのような礼を現在も残しているものがある。

武家の礼法の系統としては、室町時代に生まれた今川流・伊勢流小笠原流のほか、江戸時代に生まれた武田流細川幽斎武田吸松斎から教えを受けて起こした流派なので、細川流ともいう)や吉良流(忠臣蔵で有名な吉良義央の父、吉良義冬が起こした流派)などが知られているが、現代においては小笠原流が最も普及している。

茶道のお辞儀は戦国時代の千利休から発展したもので、基本的に座ってする「座礼」である。現代では流派ごとに細かい所作が違っているが、「真・行・草」の理念がお辞儀にも当てはめられており、「真」が上半身を深く折るお辞儀、「草」が軽い会釈、「行」がその中間である。武家の礼法に比べて茶道の立ち居振る舞いは丸みを帯び、所作も細やかである。現代では、武家の礼法の「座礼」よりも茶道の「座礼」のほうが、習い事や学校の部活を通じて広く知られている。

近代以降に古武術から武道に発展する形で生まれた、武道の流派のお辞儀としては、大きな声で「押忍」と言う空手のお辞儀が有名だが、この「押忍」は明治時代に大日本武徳会の武道専門学校で生まれたらしい。

小笠原流のお辞儀の仕方

小笠原流のお辞儀の仕方は、幕府高家として将軍家から大名、旗本に至る殿中における礼儀作法を司ってきた小笠原流弓馬術礼法と、小倉の大名家に伝わる小笠原流礼法の二派があり、今日まで続いている。しかしながら、明治維新を境に西洋文化の流入と武家文化の軽視が急激に進み、新政府の担い手の多くが上流武家文化に無知であったこともあり、礼法はヨーロッパのような紳士の嗜みではなく、もっぱら女子教育の一環へと存在意義が移っていった。

「座礼」には九品礼と言って、目礼、首礼、指建礼、爪甲礼、折手礼、拓手礼、双手礼、合手礼、合掌礼の九種類があり、高い身分の者だけが許される目礼と首礼、および礼拝にしか用いない合掌礼を除き、膝を中心とする手と指の形及び位置と上半身の折り方で丁寧の度合いを示す方法は、明治以降、日常生活では次第に簡素化され、やがて廃れていった。

一方、「立礼」は、後述する近年ビジネス・スクールやマナー教室で教えているお辞儀と違い、所作に男女の差はない。足を平行にして立ち、手先をまっすぐ伸ばしてそろえ、自然に手が定まる位置を出発点として、静かに腿の上を膝がしらに向けて滑らせる。首だけを丸め込まず、首と背中がまっすぐなまま尻を後ろに突き出す要領で上体を前に倒すと美しいフォームになる。この伝統的な「立礼」は和服でも洋服でも何ら問題なく行えるお辞儀である。大事な点は、立ち止まってからお辞儀をすることと、深いお辞儀をする場合は、荷物はかたわらに置くか、そばの人に預けて、両手を空にして行うことである。

昭和の国民礼法におけるお辞儀

昭和16年(1941年)に戦時下において国民が認識すべき礼法として文部省制定の「礼法要項」が発表された[1]

ビジネス界のお辞儀の仕方
 
お辞儀の角度差

ビジネス界のお辞儀の仕方は通常3種類ある。最も軽く腰を曲げるお辞儀を会釈と言い、これは15度曲げるのが基本とされる。主に廊下ですれ違う際などに使用する。 次は腰を30度ほど曲げるお辞儀で、これを敬礼と言う。ビジネス上は最も一般的とされ、来客への挨拶や会議室への出入りなどでも使用される。 より敬意を表すためには、45度ほど腰を曲げてお辞儀をする。これを最敬礼と言う。非常に重要な相手(取引先の代表者など)への挨拶や、重要な依頼や謝罪をするとき、また冠婚葬祭の場などで使用するとされる。

大方のビジネス・スクールやマナー教室では、男女のお辞儀の仕方に差異が見られ、男性は腰を曲げたときに手は体の横にそのまま添わせるように、女性は臍の下あたりで両手の指先を重ねるようにと教えている。男性のお辞儀は、旧日本軍の軍隊式礼を、女性のお辞儀は、昭和時代のデパート・ガールやその頃スチュワーデスと呼ばれていた客室乗務員が行っていたスタイルをベースにしている。ただし、男性はかかとを付けるよう求められるので、体を前に倒すとバランスが崩れ、両手が自然に尻を抑えることになり、女性は腹痛時と同じ姿勢となるだけでなく両ひじが張って大変見苦しくなる。ひじを張るまいとすれば両手は丹田より下がって陰部を上から押さえる格好となる。こうした尻や陰部のあたりに手を当てるお辞儀は、国際的な場面では失礼になる点に留意する必要がある。

ヨーロッパ

 
お辞儀をする紳士。ヴェンツェル・ホラー (1607年1677年)
 
ボウ・アンド・スクレープ
 
1943年イギリス国王たる海軍元帥ジョージ6世に対するイギリス海軍における各種の礼(お辞儀・握手・挙手の敬礼登檣礼等)
1961年、イスラエルの裁判に望むアイヒマン。席に座る前に、一礼している。

ヨーロッパではお辞儀は伝統的な挨拶、お礼、謝罪の行為である。これは主に男性の習慣であり、女性はカーテシーをする。貴族社会ではbow and scrapeと言われるお辞儀の習慣がある。Bow and scrapeは右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出す。

宗教におけるお辞儀

キリスト教

キリスト教では尊敬や服従を表すためにお辞儀をする。祭壇を通るときや、礼拝の特定の時(例えばイエス・キリストの名前が出るとき)にお辞儀をする。

イスラム教

イスラム教ではお辞儀は神に対してのみ行われるものであり、人間に対するお辞儀は忌み嫌われている。

ユダヤ教

ユダヤ教ではモーセの十戒の2つめの戒律にて神以外のものに対してお辞儀をすることが禁止されていると解釈されている。

ユダヤ人のお辞儀

ユダヤ人の儀式ではお辞儀はキリスト教と同様に尊敬の現われであり、ユダヤ人の礼拝の特定の時に行われる。ユダヤ人のお辞儀はわずかに膝を曲げるものであり、そして膝を伸ばす間に上体を前に曲げる。礼拝のAleinuのところを終えるとき、"V'anachnu korim umishtachavim u'modim,"(「私たちは感謝の意を表すために膝を曲げお辞儀をします」の意)と言いながらお辞儀をする。礼拝の"Bar'chu."の最中にもお辞儀をする。多くの人は"Adonai"(ユダヤ人の尊敬する王)の名が挙がるときにお辞儀を行い、誰かが祈っている間にまだ立っていた場合にもしばしばお辞儀をする。

伝統武術のお辞儀

合気道剣道空手柔道といった伝統武術では試合の開始前後や道場への入退室時などにお辞儀をする。海外の道場でも一般的になってきており、また日本の空手が原型であるテコンドーや、日本発祥ではない中国武術でも一般的になりつつある。

関連項目

外部リンク

参考資料

  • 小笠原 清忠『日本人の9割が知らない日本の作法』、青春出版社 、2016年。
  • 小笠原 清基『小笠原流 美しい大人のふるまい 』、日本実業出版社、2015年。
  • 小笠原 清忠『入門 小笠原流礼法: 美しい姿勢と立ち居振る舞い』、一般財団法人礼法弓術弓馬術小笠原流、2014年。
  • 小笠原 清基『一流人の礼法』、日本経営合理化協会出版局、2008年。
  • 千宗左『定本 茶の湯表千家』、主婦の友社、昭和六十一年。
  1. ^ 『昭和の国民礼法 : 文部省制定』国民礼法研究会 編著 (帝国書籍協会, 1941)
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