エアバス ベルーガ XL

エアバスA330をベースに開発された大型貨物輸送機
エアバスA330 > エアバス ベルーガ XL

エアバス ベルーガ XL

ベルーガXLの初飛行

ベルーガXLの初飛行

  • 用途貨物機
  • 設計者エアバス
  • 製造者エアバス
  • 運用者:エアバス・トランスポート・インターナショナル[1]
  • 初飛行:2018年7月19日 (2018-07-19)[2]
  • 運用開始:2020年1月9日 (2020-01-09)[3]
  • 運用状況:運用中

エアバス ベルーガ XL は、欧州のエアバス社が開発した大型貨物輸送機である。

概要

編集

2014年11月に本機の開発計画が立ち上げられ、2016年7月19日に細部が公表された。

本機の製造にはA330シリーズの貨物型A330-200Fの前部胴体と旅客型A330-300の後部胴体を利用している。コンポーネントや機器は従来の物を再利用し、コックピットや貨物室を新規開発した[4]

バブル・エアフレーム・セクションと呼ばれる拡張部を胴体上部に加えることで、全長45m、内径8m、最大積載重量50tの貨物デッキを備えることになる。これはベルーガSTに比べて30%容積が拡大している[4]

また、ベルーガSTと同様に、貨物の搬入・搬出のための開口部を得るためコックピット部は機体下部に移されている。

この機体はベルーガSTと同じく同社のナローボディ機ワイドボディ機の製造用部品輸送用に運用され、ヨーロッパ各地の工場から、完成した胴体セクションや左右主翼セット(最大でA350 XWBまで可能)を最終組立施設があるフランスのトゥールーズやドイツのハンブルクへ運ぶのに利用される。2023年までに計5機の製造が計画されており[4]、完成後は順次従来のベルーガSTを置き換える予定となっている。

当初、初号機は2019年中頃の就航が予定されていた[5]

2017年1月8日、エアバスは「ベルーガXL」の主要パーツの組立を開始したと発表し[6]、2018年1月4日にロールアウトした。

その後、地上試験を経て2018年7月19日に初飛行に成功し、その後10ヵ月間に渡って600時間の試験飛行を行う予定とされた[2][4]が、最終的には700時間、200項目を超える試験項目をこなして2019年11月13日にEASAから型式証明を取得した[7]

その後、当初計画から約半年遅れとなる2020年1月9日から、正式な輸送業務を開始した[3][8]

設計

編集
 
本機のベースとなったエアバス A330

貨物室が非与圧なのはベルーガSTと同様であるが、本機では貨物室容積がベルーガSTから30%拡大されており、ベルーガSTでは片翼だけしか運べなかったエアバスA350 XWBの主翼を左右セットで運べるようになったが[9]エアバスA380の胴体や主翼は搭載出来ないため、船で輸送している。

ベルーガSTに比べて胴体は6.9メートル、最大幅は1.7メートル拡大され、積載可能重量が6トン増加している[10]。機体前部はA330-200、機体後部はA330-300をベースにしているが、これは重心を適切な位置とするための工夫であり、貨物室床面や構造はA330-200Fのものを踏襲している。拡大された貨物室の取り付けには3か月を要し、接合のために8,000個もの新規部品が用いられている[11]

垂直尾翼が巨大な貨物室に隠れるため、垂直安定板の面積を50%拡大したうえで、水平安定板にも2枚の垂直安定板が追加されている。

貨物扉とコックピット含む機首部分はフランスのステリア・エアロスペース、貨物室はドイツのデハールデ/P3・フォイト・エアロスペース、後部胴体およびドーサルフィンはスペインのアエルンノヴァ、水平尾翼ボックス延長部および水平尾翼翼端の垂直安定板はスペインのアチトゥリが担当した[12]

巡航速度は高度35,000フィート (11,000 m)でマッハ0.69、最大積載時の航続距離はベルーガSTの900海里 (1,700 km)から2,300海里 (4,300 km)に大きく延長されている[11]

仕様

編集

出典: エアバス社公開資料[13]

諸元

性能

  • 巡航速度: 737 km/h (398 kt) (高度35,000 ft、マッハ0.69)
  • 航続距離: 4,300 km (2,300 海里) (最大積載時)
  • 実用上昇限度: 11,000 m (35,000 ft)


  使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

出典・脚注

編集
  1. ^ Service entry: the BelugaXL supports Airbus’ production ramp-up with a “smile””. Airbus (2020年1月28日). 2020年8月23日閲覧。
  2. ^ a b "First BelugaXL successfully completes maiden flight" (Press release). Airbus. 19 July 2018. 2020年8月23日閲覧
  3. ^ a b "Airbus BelugaXL enters service, adding XL capacity to the fleet" (Press release). Airbus. 13 January 2020. 2020年8月23日閲覧
  4. ^ a b c d Tadayuki YOSHIKAWA (2017年1月8日). “ベルーガXL、初飛行成功 19年就航へ” (日本語). Aviation Wire. https://www.aviationwire.jp/archives/151648 2018年7月20日閲覧。 
  5. ^ 『NEWS DIGEST』「航空技術」2016年9月号、日本航空技術協会、雑誌03783-09、15頁
  6. ^ “エアバスの次世代輸送機「ベルーガXL」、組立開始を発表 18カ月間の工程” (日本語). Fly Team. (2017年1月8日). http://flyteam.jp/news/article/73824 2017年1月8日閲覧。 
  7. ^ "BelugaXL receives EASA Type Certification" (Press release). Airbus. 13 November 2019.
  8. ^ エアバスの大型貨物機「ベルーガXL」、正式運航開始”. CNN.co.jp (2020年1月15日). 2020年8月23日閲覧。
  9. ^ "Beluga XL programme achieves design freeze" (Press release). Airbus. 16 September 2015.
  10. ^ Airbus Beluga”. AERTEC Solutions. 2017年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月21日閲覧。
  11. ^ a b David Kaminski-Morrow (21 March 2018). “Second BelugaXL will be first into service”. Flight Global. https://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-second-belugaxl-will-be-first-into-service-446940/ 
  12. ^ エアバス、ベルーガXLの設計・製造企業を発表 2019年から運航”. FlyTeam ニュース (2015年6月18日). 2020年9月20日閲覧。
  13. ^ A330-700 Beluga XL Aircraft Characteristics Manual”. airbus (31 Aug 2018). 2020年9月20日閲覧。

関連項目

編集

外部リンク

編集
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy