映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険
『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』(えいがドラえもん のびたのなんきょくカチコチだいぼうけん)は、2017年の日本のSFコメディアニメ映画。藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』を原作とした、映画「ドラえもん」シリーズの第37作[2]。高橋敦史が監督・脚本を務めた。
映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 | |
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監督 | 高橋敦史 |
脚本 | 高橋敦史 |
原作 | 藤子・F・不二雄 |
出演者 |
水田わさび 大原めぐみ かかずゆみ 木村昴 関智一 釘宮理恵 浪川大輔 浅田舞 織田信成 サバンナ 平原綾香 |
音楽 | 沢田完 |
主題歌 | 平井堅「僕の心をつくってよ」 |
制作会社 | シンエイ動画 |
製作会社 | |
配給 | 東宝 |
公開 | 2017年3月4日 |
上映時間 | 101分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 44.3億円[1] |
前作 | 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生 |
次作 | 映画ドラえもん のび太の宝島 |
あらすじ
編集10万年前の南極にて、謎の少女カーラと老人ヒャッコイ博士は都市遺跡を探索中に「ブリザーガ」と呼ばれる巨像の骨格を発見する。カーラはその頭部から「リング」を抜き取るが、遺跡を護るタコ型の巨像オクトゴンの襲撃を受けて取り落としてしまう。リングは腕輪のような形に変形しながら水路へ沈んでいった。
10万年後、現代の東京ではドラえもんとのび太が夏の暑さに耐えかねていた。ある日、ドラミから22世紀のロボット占いでドラえもんは「氷難で最悪な一週間になるから氷に近づくな」と忠告される。しかし、占いを信じないドラえもんはその話から南太平洋に浮かぶ巨大な氷山へ遊びに行くことを思いつく。ひみつ道具「氷細工ごて」で氷の遊園地を作ったドラえもん達は、氷山の下層部分で氷漬けになったリングを見つける。調べてみたところ、リングが埋まったのは、人が住んでいるはずもない10万年前の南極だった。
リングの落とし主に会うために氷山の動きを辿り、氷が作られた場所へ南極探検[注 1]に向かったドラえもんたち。激しいブリザードを避けてビバークした場所で「ここほれワイヤー」が氷の下に大きな反応を見つける。さっそく氷底探検車で氷を掘り進むと、広大な地底空間と氷に閉ざされた巨大な都市遺跡が姿を現した。遺跡でひと際大きな塔に入ると氷漬けになっていた謎の生物モフスケを発見、更に何故かドラえもんの姿で氷漬けになっていた石像ヤミテムの襲撃を退けた一同は、その場所の氷が10万年前に出来た事を突き止めると、リングを届けるため「タイムベルト」で10万年前へとタイムスリップする。
氷に閉ざされる以前の遺跡へたどり着いたドラえもん達は、オクトゴンに襲われていたカーラとモフスケに似た姿の生物ユカタンを救出する。カーラにリングを返そうとするのび太だが、石コウモリの襲撃を受けリングと荷物を奪われてしまう。更に氷点下100℃に達する夜が迫っている事を知らされた一同はヒャッコイ博士のシェルターへ避難することになる。カーラたちは自分たちのことをヒョーガヒョーガ星から調査にやってきた異星人と名乗り、遺跡を作ったのも彼らの祖先だと説明する。ヒョーガヒョーガ星人は失われた古代技術を研究することで科学を発展させようとしていたが、惑星開拓用に製造された最強の石像ブリザーガの封印を解いた為にヒョーガヒョーガ星を氷漬けにされてしまった。博士たちは故郷を救うため、ブリザーガを封じる力を持つリングを手に入れようとしていたのだ。
翌朝、石コウモリに取り付けた「トレーサーバッジ」の反応を追って遺跡調査へ向かった一同。遺跡内ではドラえもんの姿に擬態したヤミテムが暗躍し、鈴と四次元ポケットを奪われた本物のドラえもんが偽物と誤解されてしまう。しかし、本物のドラえもんの身を挺した行動とのび太の優しさでヤミテムの陰謀が発覚。怒り狂ったヤミテムを「急速冷灯」で氷漬けにし、奪還した四次元ポケットの中に入っていたリングをカーラに手渡すことに成功する。だが、同じころブリザーガの骨格がリングを外された影響で復活、地球を氷漬けにしようと暴走を始める。タイムベルトを使って10万年後に避難しようとする一同だが、ドラえもんとユカタンが強風に吹き飛ばされて10万年前に取り残されてしまう。
現代に辿り着いたもののタイムベルトの電池が切れ、氷に閉ざされた地底空間で途方に暮れる一同。しかし、ドラえもんはユカタンを氷漬けにして冬眠させることで未来へ予備の電池を送っていた。現代で発見されたモフスケの正体は永い眠りを経て変色したユカタンだったのだ。10万年前へ舞い戻ったのび太達はドラえもんを救出し、ひみつ道具を駆使してブリザーガの動きを止め、リングを頭部に突き刺して再封印することに成功する。リングは塵になって消滅したが、荷物を取り返すため石コウモリの巣を捜索していたジャイアンとスネ夫が無数のリングの残骸を発見する。ブリザーガ封印の希望を得たカーラと博士はドラえもんたちを地上へ送り届け、宇宙へと帰っていった。
冒険を終えた一週間後、ドラえもんとのび太は天体望遠鏡で10万光年彼方にあるヒョーガヒョーガ星の座標を観測する。そこには10万年前の光景、博士の研究が成功し惑星を覆う氷が溶けつつあるヒョーガヒョーガ星の姿が映っていた。
声の出演
編集ゲストキャラクター
編集- カーラ
- 声 - 釘宮理恵
- ヒャッコイ博士と共に地球を訪れた赤い髪の少女。自ら率先して遺跡を調査する活発な性格で、ヒャッコイ博士の世話を焼くしっかりものだが、ごちそうを食べられることを知ると大喜びする子供らしい一面も持つ。ブリザーガの身体によじのぼるなど身体能力は極めて高い。凍り付いた故郷のヒョーガヒョーガ星を救うために必要なリングを探す旅に出ており、10万年前の地球を訪れてリングを発見したが、そこでオクトゴンに襲われ、ドラえもん達に助けられたことで行動を共にする。その後、博士からリングを外したせいでブリザーガの封印を解いてしまったことやリングを元の位置に戻さないとならないことを知らされ、当初はヒョーガヒョーガ星を救うか、ブリザーガを封印して地球を救うかで葛藤する。しかし、ドラえもん達を見るうちに地球を氷漬けにしたくないという一心が芽生え、ブリザーガを止める為にリングを使うことを決意、ブリザーガを自らの手で封印した。その後、リングがブリザーガと共に崩壊したため落ち込んだが、博士に励まされ、更にジャイアンとスネ夫が見つけたリングの残骸にヒョーガヒョーガ星を救う見込みがある事を知って喜びを露わにし、のび太達に礼と別れを告げて地球を後にした。
- ヒャッコイ博士
- 声 - 浪川大輔
- カーラと共に地球を訪れた科学者の老人。オクトゴンとの戦闘で右足を骨折しており、絶対安静にしているようカーラに言われているが、「サバイバルスーツ」と呼ばれる防寒服を着て、度々内緒で遺跡の調査を行っている。故郷を救うためカーラと共にブリザーガ封印の方法を探しており、長い放浪の末にリングを発見したが、リングを外したせいでブリザーガの骨格を復活させてしまったことを知り、カーラにリングを元に戻すよう促す。ブリザーガ封印後はジャイアンとスネ夫が発見したリングの残骸を研究することでヒョーガヒョーガ星を救う可能性を見出し、ドラえもん達を地上に送ったのち別れを告げて地球を後にした。エピローグで氷が溶けかけたヒョーガヒョーガ星の様子を見たドラえもんは「きっと博士の研究が成功したんだ」と推測している。
- パオパオ
- 声 - 浅田舞、織田信成
- ゾウに似た2本足の動物。マンモス型で、黄色い個体と緑色の個体が存在する。空は飛べないが、鼻でドラえもんたちを抱えたまま持ち上げたり、素早い脚力で水面や足場を駆け抜けることが出来る。
- 非常に寿命が長く、氷点下に耐えられる程の丈夫な体を持っていて氷に覆われたまま何万年もの間冬眠し続けることも出来る。中には凍り付いたまま彗星に乗って数百万年もの間、宇宙を旅していた個体が発見された例もある。
- モフスケ / ユカタン
- 声 - 遠藤綾 / 東山奈央
- パオパオの一個体。現代の遺跡で氷漬けになった状態で発見され、「(体が)モフモフしているから」という理由でモフスケと名付けられた。解凍された直後からのび太やドラえもんに懐く様子を見せ、電池のようなものが入ったカバンを持っていた。更に10万年前にカーラが連れていた個体ユカタンとは容姿が似ているものの体色や耳の形状が異なるという謎を有した存在として描かれる。後にブリザーガの冷凍ビームを受けたユカタンの耳がモフスケと同じ形状に欠損し、更にドラえもんが未来へタイムベルトの予備電池を送る為にユカタンを凍結・冬眠させたことが明かされ、10万年に及ぶ冬眠の影響で変色したユカタンこそがモフスケの正体だったことが判明した。
- オクトゴン
- 声 - 八木真澄
- 古代遺跡を守る巨大な石像。壺を被ったタコあるいはイカのような姿をしている。体内から粘着性のある毒液を出す。弱点は大きな音。
- カーラがリングを抜いた影響で復活し、彼女がリングを水路に落とした後もなお追いかけ回した。コエカタマリンによる攻撃を受けても平然としていたが、カーラから弱点を聞かされたドラえもんは驚音波発振式害獣撃退器を取り出し、それを使用したジャイアンの歌声で倒された。終盤ではブリザーガの冷凍ビームで凍らされており、凍ったままの姿で一瞬だけ登場した。
- ヤミテム
- 声 - 高橋茂雄 / 水田わさび(ドラえもんの姿・声を真似た際) / 大原めぐみ(のび太の声を真似た際)
- オクトゴンと同じく遺跡を守るペンギンの形をした[注 2]石像。ドラえもんの姿に化けたりのび太の声を真似するなどの擬態能力を持ち、ヘルメットを噛み砕くほどの怪力や相手の口を封じる魔法のような力も持つ。ドラえもんたちの動向を観察し、彼らの名前やひみつ道具の扱い方を覚えてジャイアンやスネ夫を欺くほど知略にも長けている。強い悪意を持っており、のび太達の見ていないところで下卑た表情を浮かべたり、怒りを露わにすることもあった。
- 当初は現代の遺跡にて、ドラえもんに擬態した姿のまま氷漬けになって発見される。ジャイアンに氷ざいくごてで解凍されると後述の経路から正体を現してのび太に襲い掛かるが、ドラえもんが放った急速冷灯により再び凍らされた。当然ドラえもんはこの事態に困惑し、一同は10万年前に何が起きたかを知るべくタイムスリップを敢行することになる。
- 10万年前の遺跡ではリングを捜索していた一同を監視し、声真似を使って彼らを少しずつ分断していった。石コウモリの巣でドラえもんを襲撃して手足を氷漬けにしたあと、強奪した鈴と四次元ポケットを身に着けてドラえもんに擬態[注 3]、のび太達を騙してエレベーターに乗せ、天井の棘で串刺しにして殺害しようと目論む。助けに来た本物のドラえもんを偽物と誤認させて同士討ちさせようとするが、どっちが本物かを選ぶのに躊躇しつつも本物のドラえもんを庇うのび太に痺れを切らして彼もろともドラえもんを急速冷灯で凍結させようとしたことが仇となり、本物のドラえもんが身を挺してのび太を助けた事で正体がバレてしまい、最後は怒り狂って襲い掛かろうとしたところをカーラが照射した急速冷灯を浴びて凍らされた[注 4]。
- ブリザーガ
- 声(カーラの回想シーンの歌声) - 平原綾香
- 古代ヒョーガヒョーガ星人が作り出した巨大かつ最強の石像。「惑星が凍結すると、反動で生命の爆発的進化が起こる現象」を人為的に発生させるために作られた惑星環境改造装置であり、高度な文明を築き、銀河の果てまで旅をしていた古代ヒョーガヒョーガ星人は宇宙各地にこの石像を遺していた。
- 口からは惑星をも凍り付かせるほど強力な冷凍ビームを放つことができ、羽を生やすことで飛行することもできる。また、額の穴から「リング」が外された状態であれば、未完成の骨格状態から周囲の冷気を吸収することで自動的に身体を組み上げて起動することもできる。カーラ達の故郷であるヒョーガヒョーガ星では地下深くに封印されていたが、遺跡を調査中に封印が解かれて複数体が暴走し、ヒョーガヒョーガ星全体を氷漬けにしてしまった。地球の古代ヒョーガヒョーガ星人の遺跡にも残骸が多数残されていたが、どれも未完成で活動した痕跡は見当たらなかった。しかし、その中の一体は完成して動き出す直前の状態で封印されており、カーラが骨格から「リング」を外した影響で冷気を吸収し始め、物語終盤で完全復活を遂げた。復活したブリザーガは辺り一面に冷凍ビームを放って遺跡を氷漬けにしていき、ドラえもん達をも氷結させようと暴走。氷細工ごてとふかふかスプレーにより動きを封じられるが、今度は羽を生やし、地上を氷漬けにしようと企む。しかし、とりよせバッグを使ったドラえもんにより大量の水を浴びせられて動きを封じられ、その隙を突いたカーラとのび太にリングをはめ込まれたことで完全に凍結し、最後はスネ夫の蹴りで崩れて消滅した。
設定
編集- リング
- 本作のキーアイテムとなるオーパーツ。普段は金色の腕輪のような形だが、有事には柄頭にあたる腕輪部分から柄と鍵のような刃が現れて刀剣のような形状へと変形する。
- ブリザーガを封印する力を持っており、ヒャッコイ博士は氷漬けにされたヒョーガヒョーガ星を救う希望としてこのリングを捜索していた。
- 物語の冒頭でカーラが未完成のブリザーガの額から抜き取るが、オクトゴンの襲撃で水路へ落としてしまう。その後10万年の歳月を経て氷河から氷山とともに海上へ流出した。
- これをのび太が発見し、落とし主に返そうと提案したことが冒険の発端となる。石コウモリやヤミテムに奪われるなど紆余曲折を経てカーラの手に戻り、最後は暴走したブリザーガを再封印するために使用。塵になって消滅した。
- しかし、石コウモリの巣には未完成、あるいは破損したリングの残骸が大量にしまい込まれており、これを回収することでヒョーガヒョーガ星復興の希望が生まれた。
- ヒョーガヒョーガ星
- 地球からちょうど10万光年(銀河系宇宙の直径と同程度)彼方に存在する緑豊かな惑星。原住民のヒョーガヒョーガ星人はヒトと同じ姿を有するが、独自の言語を持つため日本語でのコミュニケーションは不可能。
- かつては「石像」と呼ばれるロボットを造り出したり、銀河の果てまで旅できるほど高度な科学技術を有していたが、10万年前の時点では既に技術が失われていた。
- 古代遺跡を研究することで文明の再興を目指していたが、遺跡からブリザーガを復活させてしまった為に惑星全土を氷漬けにされてしまい、住民たちは母星を捨てて他の星へ避難することになった。
- エピローグでは博士の研究が成功し、赤道部分の氷が溶け始めた10万年前のヒョーガヒョーガ星の姿が観測される。
- 『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』に登場したコーヤコーヤ星やトカイトカイ星と名称の語感が似ていてパオパオも生息しているものの、向こうは別の遠い小宇宙にあり、系列惑星ではない模様。またコーヤコーヤ星などの住人は低重力環境で地球人に比べ体力が弱いが、ヒョーガヒョーガ星人の体力は地球人と大差ない。
- 都市
- 南極の地底に存在していた巨大なジオフロント。かつて古代ヒョーガヒョーガ星人が建造した都市だが、10万年前の時点で既に廃墟と化している。
- 天井に空が映し出された3時間だけ昼になるが、それ以外の時間は夜となりマイナス100℃を下回る超低温となる。
- また、都市の各地ではオクトゴン、ヤミテム、石コウモリのほかにも巨大な鳥や竜、百足のような形をした石像が稼働しており、経年劣化で崩落する部分もあるため非常に危険。
- 10万年後の現代ではもっとも高い建造物である塔の頂上付近まで完全に氷に覆われており、天井や石像も機能を停止している。
- シェルター
- ヒャッコイ博士たちが活動拠点とする宇宙船。キャタピラによる地上移動が可能なほか、その名の通りブリザーガの冷気にも耐えうるシェルターにもなる。
- 石コウモリ
- 都市で稼働している石像の一種。その名の通りコウモリの形をしており、侵入者を発見すると襲い掛かって光るものや食料を奪い取る。
- 巣と呼ばれる建造物の中には彼らの拾い集めた宝物が溜め込まれており、その中にはリングの残骸も大量に存在していた。
製作
編集企画・脚本
編集藤子プロでは『映画ドラえもん』のアイデアとして以前より南極が上がっており、生前の藤子Fも長編の舞台案として言及していたという[3]。切り口としてはてんとう虫コミックス『ドラえもん』18巻収録作品「大氷山の小さな家」を用いている[4]。
監督には2013年よりテレビシリーズの絵コンテ・演出・脚本・原画を担当していた高橋敦史を起用。高橋は本作で脚本のみならず絵コンテ・演出まで務めた。
脚本会議は藤子プロの人間・シンエイ動画のプロデューサーを交え週1回約半年かけて行い、ストーリーを練る際にはスノーボールアース仮説を取り入れた。藤子Fが貸本屋時代に描いた漫画を参考にしたほか、過去の『ドラえもん』を組み合わせてもいるという[4]。また、元南極越冬隊隊長の三浦英樹に取材を行った[4]。
高橋は本作を子供向けに振り切るため、泣きのドラマや親にとってのいいシーンは「湿っぽくやった方が映画らしくなる」としつつも「『ドラえもん』は元々そんなにしっとりした世界ではない」『ドラえもん』ぽくない」とし、外したとも語っている[4]。
スタッフ
編集高橋がスタジオジブリ出身であることに言及したインタビューでは、宮崎駿から影響を受けたものとして「どうやって遅れがちになるスケジュールを具体的に維持していくか、という方法論」[3]、「システムを作るところから作品に入っていく」部分を挙げており、本作ではその一環としてストーリーボード(イメージボード)を制作した[4]。描画はイラストレーターのヒョーゴノスケと丹地陽子が共同で手がけ[5]、一部がアレンジされ宣伝ポスターとなっている[6]。イメージボードは脚本に書かれた場面からビジュアルを作っていったが、脚本と同時進行だったために内容の変更で使用されなかった物もあったという[7]。のちに制作で使用されたイメージボードは全て『アニメスタイル 012 2017.12』に収録された。
作画面ではキャラクターデザインが『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』(2013年)より担当してきた丸山宏一に替わり、清水洋が抜擢された。これは監督が替わってもキャラクターデザインが同じ体制では前年の作品と平行して進められないためであり、メインキャラクターも本作用に清水がデザインし直した[4]。高橋はキャラクターの頭身を下げ、作画が大変になりすぎないようベースをシンプルにするよう提案したという[4]。
美術にはスタジオワイエスが初登板し、設定を池田祐二、監督を高木佐和子が務めた。また本作より「撮影特殊効果」という役職が新たに設けられ、アニメフィルムの大矢創太が就任した。
また、『のび太の恐竜2006』から担当してきた沢田完が音楽を担当した最後の作品でもある(テレビシリーズの音楽は引き続き担当している)。
- 原作 - 藤子・F・不二雄
- 監督・脚本・絵コンテ・演出 - 高橋敦史
- キャラクターデザイン - 清水洋
- 美術設定 - 池田祐二
- 美術監督 - 高木佐和子
- 撮影監督 - 末弘孝史
- 撮影特殊効果 - 大矢創太
- 編集 - 小島俊彦
- 録音監督 - 田中章喜
- 効果 - 糸川幸良
- 音楽 - 沢田完
- 脚本原案 - 藤子プロ
- 脚本協力 - 角山祥道、与口奈津江
- 演出助手 - 志賀翔子
- イメージボード - ヒョーゴノスケ、丹地陽子
- 作画監督 - 清水洋、丸山宏一、山川浩臣、桝田浩史、茂木琢次
- プロップデザイン - 鈴木勤
- 動画検査 - 屋宜優
- 色彩設計 - 松谷早苗
- 色彩設計補佐 - 戸部弥生、大金紀子、稲村智子、今泉ひろみ、助川佳代子
- 色指定・検査 - 倉内美幸
- 音楽協力 - テレビ朝日ミュージック
- 編集スタジオ - 岡安プロモーション
- 編集助手 - 藤本理子、山田健太郎
- 取材協力 - 三浦英樹(第56次日本南極地域観測隊 越冬隊隊長)、浅野良子(第56次日本南極地域観測隊 越冬隊隊員)
- パオパオダンス振付 - 西村郁子
- まんが協力 - むぎわらしんたろう
- まんが原案協力 - 高橋茂雄(サバンナ)
- おまけ映像 - 今井一暁、亀田祥倫、杉崎聡、増泉路子
- テレビアニメプロデューサー - 白倉由紀子、河西麻利子
- 制作進行 - 新崇雄、佐藤大真、田原麻美、篠田宇俊、新垣貴大、小笠原卓也
- 制作デスク - 中村和喜、武井健、落合竜太郎
- チーフプロデューサー - 大倉俊輔、大金修一
- プロデューサー - 高橋麗奈、吉田健司、滑川親吾、松井聡
- 製作 - 藤子プロ、小学館、テレビ朝日、ADK、ShoPro、シンエイ動画
- 配給 - 東宝
主題歌
編集評価
編集公開後に一部で本作はハワード・フィリップス・ラヴクラフトの『狂気の山脈にて』をはじめとしたクトゥルフ神話が原案ではないかと指摘されており、映画ライターの滝口アキラはその説を否定しつつ『狂気の山脈にて』をはじめとした様々なラヴクラフト作品の要素がオマージュされていると指摘し、それらを低年齢層向けの映画として成立させた高橋の手腕を高く評価している[8]。
興行成績
編集全国371スクリーンで公開され、2017年3月4、5日の初日2日間で興収6億9181万3500円、動員59万0291人となり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位を獲得[9]。4月16日までの44日間で動員365万6559人、興収41億4795万7300円を記録(東宝調べ)し、アニメ第2作2期シリーズとしては最高記録であった『新・のび太の日本誕生』(2016年)の41億2000万円を上回った[10]。最終興行収入は44億3000万円となった[11]
動員数 (万人) |
興行収入 (億円) |
備考 | ||||
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週末 | 累計 | 週末 | 累計 | |||
1週目の週末 (3月4日・5日) | 1位 | 59.0 | 59.0 | 6.92 | 6.9 | |
2週目の週末 (3月11日・12日) | 2位 | 43.3 | 113.9 | 5.07 | 13.4 | |
3週目の週末 (3月18日・19日) | 3位 | 3.81 | 18.8 | 20日まで累計興収21.3億円、動員183.7万人 | ||
4週目の週末 (3月25日・26日) | 25.8 | 228.9 | 3.04 | 26.5 | 週末動員は3位で、週末興収は4位 | |
5週目の週末 (4月1日・2日) | 25.6 | 311.7 | 2.79 | 35.4 | 週末動員は3位で、週末興収は4位 | |
6週目の週末 (4月8日・9日) | 4位 | 356.4 | 1.66 | 40.4 | 週末動員は4位で、週末興収は5位 | |
7週目の週末 (4月15日・16日) | 6位 | 365.7 | 41.5 | |||
8週目の週末 (4月22日・23日) | 9位 | 0.40 | 42.0 | 週末動員は10位で、週末興収は9位 | ||
9週目の週末 (4月29日・30日) | - | 0.33 | 42.4 | |||
10週目の週末 (5月6日・7日) | - | 382.2 | 0.35 | 43.4 |
関連作品
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漫画
編集- ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 ギャグ編
むぎわらしんたろう作画。『月刊コロコロコミック』2016年12月号から2017年4月号まで連載された。大長編ではなく、4コマギャグ漫画形式。「協力」としてサバンナの高橋茂雄の名前が記載されている。未単行本化作品。『コロコロコミック』に掲載された関連漫画が単行本化されないのは、ドラえもんのオリジナル長編映画作品では初(リメイク映画では過去にも存在する)。
小説
編集- 小説 映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険
上記のタイトルで小学館ジュニア文庫より新書判が2021年11月26日発売。執筆は白井かなこ。
家庭用ゲーム
編集ニンテンドー3DSゲーム『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』が2017年3月2日にフリュー株式会社より発売された[12]。 おおまかなあらすじは映画版と同じだが、設定や展開が映画版と異なる部分が多い。
関連企画
編集きみのパオパオコンテスト
編集毎年恒例のデザインコンテスト。今回は、パオパオのデザインの募集を行った。
ドラえもんジェット
編集2016年12月30日の羽田発福岡行きJL331便にて就航し、2017年5月下旬まで国内線で運航された。なお、これとは別に国際線にて2016年9月より2017年3月まで「JAL ドラえもんJET」が運航された。機材はボーイング767-300ERのJA622Jで、機体後方に映画の衣装を着たドラえもんが描かれているほか、「JAL ドラえもんJET」同様に後方の乗降扉がどこでもドアに見立てられてピンク色に塗装されている。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 2017年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
- ^ “「映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」2017年春公開、予告編が解禁”. 映画ナタリー. (2016年7月25日) 2016年7月25日閲覧。
- ^ a b “南極はドラえもんらしい不思議に満ちている――『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』監督・高橋敦史さんが作品に込めたこだわりとは?”. アニメイトタイムズ (2017年3月6日). 2020年8月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g 『アニメージュ』JULY 2017 vol.469「この人に話を聞きたい」【第一九四回】高橋敦史/P.121 - 123を参照。
- ^ ヒョーゴノスケのTwitter 2016年7月15日 0:20の発言
- ^ “映画「ドラえもん」のグッとくるポスターはなぜ生まれた? ストーリーボードポスター誕生の経緯を取材”. ねとらぼ (2017年3月11日). 2020年8月26日閲覧。
- ^ 小黒祐一郎『アニメスタイル 012 2017.12』、スタイル、P.146 - 153。
- ^ “新作「ドラえもん」の内容が子どもにはヤバ過ぎる!との噂は本当?確かめてみた結果は?”. シネマズプラス (2017年3月30日). 2021年11月26日閲覧。
- ^ “『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』が初登場1位!『アサシン クリード』は初登場4位(3月4日-3月5日)(2017.03.06)/ニュース - CINEMAランキング通信 ”. 興行通信社 (2017年3月6日). 2017年3月6日閲覧。
- ^ “『映画ドラえもん』最新作41億円突破、新シリーズ興収記録を2年連続更新”. ORICON STYLE (2017年4月17日). 2017年4月17日閲覧。
- ^ 2017年 上半期作品別興行収入(10億円以上)
- ^ “ゲーム ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 - フリュー株式会社”. フリュー. 2017年2月26日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集
- 漫 - 原作漫画、大長編漫画等の執筆者の頭の1文字または略記号。藤=藤子不二雄。F=藤子・F・不二雄。1987年の独立前のみ「藤」と記載した(ただし『ドラえもん』は連載開始時から藤本単独作)。FP=藤子プロ。それ以外は作画者を記載。括弧付きは藤本以外が執筆した外伝、短編など。詳細は大長編ドラえもん#作品一覧(併映作品は各作品のページ)を参照。