ニザダイ

スズキ目ニザダイ科の魚

ニザダイ(仁座鯛[1]学名Prionurus scalprum )は、スズキ目ニザダイ科に分類される魚の一種。東アジア沿岸の暖海域に生息する。海藻を食べて磯焼けの一因となるうえ、海藻の成分が発酵して身に独特の臭みを帯びるが、食用にできる[2]。尾柄にある鋭い骨質板のため、取扱いには注意が必要である。

ニザダイ
保全状況評価
DATA DEFICIENT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ニザダイ亜目 Acanthuroiei
: ニザダイ科 Acanthuridae
: ニザダイ属 Prionurus
Lacépède,1804
: ニザダイ P. scalprum
学名
Prionurus scalprum
Valenciennes,1835
和名
ニザダイ(仁座鯛)
英名
Scalpel sawtail

日本での地方名は多く、バイオリン(石川)、クサンボウ(千葉県)、サンノジ、サンノジダイ(関東 - 紀伊四国)、ニザハゲ(三重県)、サンコ、ゼニモチハゲ(和歌山県)、クロハゲ(関西・四国)、カッパハゲ(大阪府)、オキハゲ(広島県)、コームキ(長崎県)、カワハギ(鹿児島県)などがある。

特徴

編集

成魚の全長は40cmほど[1]だが、50cmを超える個体もいる。体は広葉樹の葉のような形でよく側扁し、皮膚は小さなで覆われる。短い吻が前方に突き出し、その先端に小さな口がある。若魚は成魚に比べて体高が高く、尾鰭が白い。体色は茶褐色で尾柄部の骨質突起は黒く、尾びれ・尻びれの縁は白い[1]

体形はカワハギ類に似ており、実際にその名で呼ぶ地方もあるが、カワハギはフグ目で分類が異なる。また鰭の形状も異なる。ナンヨウハギシマハギカンランハギとは近縁である[1]。これらはニザダイに比べて色鮮やかで、観賞魚となる[1]

尾鰭の前には4-5個の楕円形の黒っぽい斑点が並び、このうちの3個は大きくてよく目立つ。関東から四国にかけての地方名「サンノジ」はこの斑点を漢字の「三」に見立てたものである[1]。なおこの斑点部には堅い骨質板が突き出しており、つかんだりすると怪我をする場合がある。漁獲時などの取り扱いには注意が必要である。英名"Sawtail"(の尾)もここに由来する。別の英名"Surgeon fish"は直訳すると「外科医の魚」であるが、これはメスのように棘が鋭いことに由来する[1]

新潟県宮城県以南の日本から台湾、および朝鮮半島南部の沿岸域に分布する。ニザダイ科としては最も高緯度に分布している種類でもある。沿岸や瀬の岩礁域に生息し、成魚は水深10m前後で群れを作る。主に石灰藻を食べるが、甲殻類多毛類なども捕食する[3]。昼行性で夜間は休む[1]

釣り定置網、刺し網などの沿岸漁業で漁獲されるが、磯臭さのため商品価値が低い。本種を狙って漁獲することはまずなく、市場に流通することもほとんどないが、回転寿司チェーン店くら寿司が商品化した[4]。神奈川県水産技術センターが研究開発したキャベツウニにヒントを得て[4]、一定期間キャベツを餌として飼養し、臭みの除去に成功したという[2]

メジナ釣りなどの際に外道として釣れることが多い。掛かった際の引きは強いが、頭を振って釣り竿が震えるためメジナなどと区別できる。数十匹で群れて行動するが、釣り上げようとすると暴れ、ちりぢりになるので、連続で釣れることは少ない[1]。身は磯臭いが、新鮮なうちに内臓を傷つけずに除去し、血抜きをするとよい。また、冬には臭みが薄れる。鮮度が良ければ刺身洗いにすることができ、塩焼き煮付けからあげなどで食べられる[3]

脚注

編集

参考文献

編集
  • 内田亨監修『学生版 日本動物図鑑』北隆館 ISBN 4-8326-0042-7
  • 檜山義夫監修『野外観察図鑑4 魚』改訂版 旺文社 ISBN 4-01-072424-2
  • 永岡書店編集部『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』 ISBN 4-522-21372-7
  • 藍澤正宏ほか『新装版 詳細図鑑 さかなの見分け方』講談社 ISBN 4-06-211280-9
  • 岡村収・尼岡邦夫監修 山渓カラー名鑑『日本の海水魚』(ニザダイ科解説 : 山下慎吾)ISBN 4-635-09027-2
  • 蒲原稔治著・岡村収補『魚』保育社 エコロン自然シリーズ 1966年初版・1996年改訂 ISBN 4-586-32109-1
  • Prionurus scalprum - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2008.FishBase. World Wide Web electronic publication. www.fishbase.org, version(09/2008).
  • 山本保彦 編、阿部宗明・本間昭郎 監修 編『現代おさかな事典 漁場から食卓まで』エヌ・ティー・エス、1997年11月25日、1196頁。ISBN 4-900830-22-4 
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy