モーラ

言語学の一分野における単位

音韻論におけるモーラ: mora)は、音節より小さい単位であり、音節量英語: Syllable weightを測るのに用いられる。ただし、音節の構成要素とモーラとの対応関係は言語により異なる[1]。日本語においては、モーラは川柳などの韻文のリズムの基本単位であり[2]、日本語話者はすべてのモーラに等しい長さを感じるとされる[3](はく)やモラとも呼ばれる。

概要

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古典詩における韻律用語であるラテン語mŏra [ˈmɔra](モラ)の転用(日本語における「モーラ」という表記はラテン語からの借用語の英語の mora [ˈmɔːɹə] からの音訳であり、「モラ」という表記はラテン語からの音訳)。

音韻の構造によって定められる音節とは異なり、各言語内での音長に関する規定に従う。全ての言語が音節をもっているが、音節とは異なるモーラをもつ言語ともたない言語がある。

日本語におけるモーラ

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日本語学ではとよく呼ばれる。日本語話者が日本語における音を数える際に、無意識に単位としていることが多くみられる。例えば、日本語定型詩の「七五調」や「五七調」、俳句の「五・七・五」、短歌の「五・七・五・七・七」などは、(しばしば無意識に「文字」などと言われることがあるが)実際にはこの拍を数えたものである。

日本語の多くの方言においても同様である。日本語の仮名1文字が基本的に1拍である。ただし、捨て仮名(「ぁ」「ぃ」「ぅ」「ぇ」「ぉ」「ゃ」「ゅ」「ょ」「ゎ」といった小書きの仮名)は、その前の仮名と一体になって1拍である(たとえば「ちゃ」で1拍。拗音も参照)。一方、長音「ー」、促音「っ」、撥音「ん」は、独立して1拍に数えられる(これが「音節」と異なる主な点である)。音節単位で見るなら、長音は長母音の後半部分を、促音は長子音の前半部分を切り取ったものであり、撥音は音節末鼻音鼻母音をモーラとしたものといえる(鼻母音は基になる母音+「ん」の2モーラになる)。これらは、「語頭に現れない」「単独で音節を形成しない」「お互いに連続することが稀である」などの性質をもち、二重母音の第二要素も含めて特殊拍(special mora)と呼称される。これらを除いて、単独で音節を形成する拍は自立拍(independent mora)と呼称される。

音節、モーラ方言(拍)、シラビーム方言(音節音素)比較の例
単語 音節区切り

(音声学上の単位)

モーラ(拍)方言での区切り

(いわゆる東京弁
現代の俳句短歌での
七五調五七調」の数え方)

シラビーム(音節音素)方言での区切り

東北方言などに見られる)

さる(猿) サ|ル サ|ル サ|ル
かっぱ(河童) カッ|パ カ|ッ|パ カッ|パ
チョコレート チョ|コ|レー|ト チョ|コ|レ|ー|ト チョ|コ|レー|ト
がっこうしんぶん(学校新聞) ガッ|コー|シン|ブン ガ|ッ|コ|ー|シ|ン|ブ|ン ガッ|コー|シン|ブン
がっきゅうしんぶん(学級新聞) ガッ|キュー|シン|ブン ガ|ッ|キュ|ー|シ|ン|ブ|ン ガッ|キュー|シン|ブン
かんそく(観測) カン|ソ|ク カ|ン|ソ|ク カン|ソ|ク
かあさん(母さん) カー|サン カ|ー|サ|ン カー|サン
にいさん(兄さん) ニー|サン ニ|ー|サ|ン ニー|サン

脚注

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  1. ^ 菅原真理子編『朝倉日英対照言語学シリーズ3 音韻論』、朝倉書店、2014年、30頁、55頁
  2. ^ 菅原真理子編『朝倉日英対照言語学シリーズ3 音韻論』、朝倉書店、2014年、30頁
  3. ^ "日本語では、リズムの最も基本的な単位は拍(モーラとも言います)です。日本人は一つ一つの拍はすべて同じ長さだと認識しています。" 東外大言語モジュール|日本語|発音|実践編| 1 サバイバルのためにこれだけは 1.10.1 拍感覚基礎 より引用. 2024-8-14閲覧.

関連項目

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外部リンク

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