劇映画
劇映画(げきえいが、narrative film[1][2]、fictional film、fiction film)とは、フィクション・ 物語、または創作された話・出来事を語る映画のこと[3]。なお、劇映画という呼称は一般的なもので、研究上は物語映画(ものがたりえいが)という呼称が使われている[4][5][6]。虚構ではあるが、話や登場人物が本当らしくあれば、観客は語られている内容をリアルと思うかもしれない。ライティングやカメラの動き、脚本、俳優の演技も重要な要素である。
なお、ドラマ映画(drama film、drama movie)は劇映画の1ジャンル。
概要
編集リュミエール兄弟の『水をかけられた散水夫 』(1895年12月28日公開)が世界最初の劇映画と言われている[7]。翌1896年にはアリス・ギイが『キャベツ畑の妖精』を監督。そして1902年、ジョルジュ・メリエスが『月世界旅行』を発表[8] 。アメリカ合衆国でも1903年に『大列車強盗』が作られた[9]。それ以前の映画は、たとえば『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年、リュミエール兄弟)のような、日常の出来事の中の動いている人や物を撮っただけの映画だった。メリエスらが進化させた映画技術は、劇映画を映画のスタイルとして発展させることに繋がった[8]。以後、劇映画はコメディ映画や西部劇という映画のジャンルを生み、さらに多様なジャンルに派生していった[10]。
日本最初の劇映画は『清水定吉』(1898年、小西写真店、浅野四郎撮影)と言われるが、記録としては不十分だという[11]。
劇映画とは別に、ドキュメンタリー、実験映画なども生まれた。純粋なドキュメンタリーはノンフィクションであるものの、それでも物語を語る場合もある。やがて劇映画とドキュメンタリーのハイブリッドも生まれてくる。
登場人物・シチュエーション・イベントのすべてが作者の頭の中で作られる小説と違って、映画は実在する俳優がカメラの前で演技する。
古典的ハリウッド映画の出現以来、商業映画においては劇映画が支配的になり、「映画」といえば「劇映画」のことになってしまった[12]。
関連項目
編集脚注
編集- ^ “narrative filmとは”. weblio. ウェブリオ. 2020年2月2日閲覧。
- ^ “narrative filmとは”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年2月2日閲覧。
- ^ “げき‐えいが〔‐エイグワ〕【劇映画】 の解説”. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 『世界映画大事典』日本図書センター、2008年、886頁。ISBN 978-4284200844。
- ^ 難波阿丹. “映画のNarrative Discourseの機能に関する考察”. 東京大学大学院. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 森村麻紀. “サイレント映画に明け暮れて”. CineMagaziNet!. 2020年2月3日閲覧。
- ^ Alison McMahan, Alice Guy Blaché, Lost Visionary of the Cinema (New York: Continuum, 2002) p. 13.
- ^ a b Rosalind Leveridge, “Fantastic voyages of the cinematic imagination: George Méliès’s Trip to the Moon” Early Popular Visual Culture (May 2012), 10 (2), pg. 197-199
- ^ “Narrative Film: Introduction & History”. Study.com. 2020年2月2日閲覧。
- ^ Barsam, Richard Meran and Dave Monahan. Looking at Movies: An Introduction to Film. New York: W.W. Norton &, 2010
- ^ 『映画五十年史』鱒書房、1947年、9頁。
- ^ Kaplan, E. Ann. Women and Film: Both Sides of the Camera. New York: Methuen, 1988
文献
編集- David Bordwell, Mark Dherrick Cuevas, and Kristin Thompson. 1997. Film Art: An Introduction. Fifth ed. New York: The McGraw-Hill Companies. ISBN 0-07-114073-5.