岩手開発鉄道
岩手開発鉄道株式会社(いわてかいはつてつどう)は、岩手県大船渡市で貨物鉄道を営む鉄道会社である。現在は貨物専業であるが、1992年(平成4年)3月までは旅客輸送も行っていた。
岩手開発鉄道本社 | |
種類 | 株式会社 |
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本社所在地 |
日本 〒022-0003 岩手県大船渡市盛町字東町10番地3 北緯39度5分16.99秒 東経141度42分38.33秒 / 北緯39.0880528度 東経141.7106472度座標: 北緯39度5分16.99秒 東経141度42分38.33秒 / 北緯39.0880528度 東経141.7106472度 |
設立 | 1939年(昭和14年)8月17日 |
業種 | 陸運業 |
法人番号 | 2402701000021 |
事業内容 | 石灰石の鉄道輸送 |
代表者 | 代表取締役社長 岡田 真一 |
資本金 |
1億2000万円 (2018年3月31日現在[1]) |
発行済株式総数 | 2,400,000株 |
売上高 |
5億368万円 (2018年3月期[1]) |
営業利益 |
8564万4000円 (2018年3月期[1]) |
純利益 |
6881万9000円 (2018年3月期[1]) |
純資産 |
8億5142万2000円 (2018年3月31日現在[1]) |
総資産 |
10億1712万円 (2018年3月31日現在[1]) |
従業員数 |
41人 (2018年3月31日現在[1]) |
決算期 | 3月31日 |
主要株主 |
太平洋セメント 83.7% 大船渡市 3.6% 龍振鉱業 1.7% 住田町 1.4% (2019年3月31日現在[2]) |
主要子会社 |
開発運輸株式会社 100% 株式会社カイハツ総合設備 100% 岩手開発産業株式会社 97.5% |
外部リンク | https://kaihatsu-railway.co.jp/ |
太平洋セメントが8割以上を出資する主要株主となっているが、当初の設立目的から大船渡市など地元自治体も出資しており、第三セクター方式の鉄道会社のはしりでもある。日本民営鉄道協会に加盟する[注釈 1]。
事業
編集盛駅を起点とする全長11.5kmの日頃市線・赤崎線の2つの路線を有し[3]、大船渡市の内陸部にある大船渡鉱山で産出される石灰石を、同市赤崎町にある太平洋セメント大船渡工場まで輸送している。2010年度の貨物輸送量は195万tで、私鉄では上位クラスの輸送量であるが、年間400万t以上あった1990年代以前の輸送量に比べると半減している。
1986年(昭和61年)から貸切バス事業にも進出したが、子会社の開発運輸に事業譲渡し、その後バス事業は廃止されている。
歴史
編集岩手開発鉄道は、地域振興と地下・林産資源などの開発を目的として設立された。盛駅から釜石線平倉駅間を結ぶ鉄道を計画したが、太平洋戦争中は工事が中断し、日頃市線として盛 - 日頃市間の鉄道が開業したのは、戦後の1950年(昭和25年)である。
当初は貨物・旅客輸送とも振るわなかったが、赤崎線盛 - 赤崎間と日頃市線日頃市 - 岩手石橋間を延伸し、小野田セメント(現在の太平洋セメント)大船渡工場の石灰石輸送を開始した後は、経営が持ち直した。しかし旅客輸送人員は、日本全国の旅客営業を行っている私鉄では常に最低で、1992年(平成4年)には旅客営業を廃止している[3]。
- 1939年(昭和14年)
- 1950年(昭和25年)10月21日:日頃市線 盛 - 日頃市間が開業。
- 1957年(昭和32年)6月21日:赤崎線 盛 - 赤崎間が開業(貨物営業のみ)。
- 1960年(昭和35年)6月21日:日頃市線 日頃市 - 岩手石橋間が開業。大船渡工場向けの石灰石輸送を開始。
- 1972年(昭和47年)7月:国鉄との連絡運輸を廃止[7]。
- 1976年(昭和51年)5月4日: 鉄道免許失効(岩手石橋 - 平倉間)[8]
- 1986年(昭和61年)4月:貸切バス事業開始[7]。
- 1992年(平成4年)4月1日:日頃市線の旅客営業を廃止[3]。
- 1996年(平成8年)2月:開発観光バス株式会社を設立、貸切バス事業を譲渡[7]。
- 2007年(平成19年)10月:開発運輸株式会社が開発観光バスを吸収合併[7]。
- 2011年(平成23年)
- 2013年(平成25年)10月1日:開発運輸株式会社が開発タイヤ株式会社を吸収合併[9]。
- 2022年(令和4年)4月1日:開発運輸株式会社が貸切観光バス事業を廃止[9]。
路線
編集日頃市線・赤崎線共に軌間1,067mm、単線非電化[10]。運行上は路線の区別なく全列車が通し運行で、2007年時点では一日13往復が設定されている[10]。
車両
編集現有車両
編集2007年(平成19年)時点で貨物列車牽引用のDD56形ディーゼル機関車4両と、石灰石輸送用のホキ100形貨車45両の計49両が在籍している[3]。
- DD56形(DD5651 - 5653)
- 1968年(昭和43年)から1973年(昭和47年)にかけて新潟鐵工所で製造されたセンターキャブ式ディーゼル機関車で、スタイルは国鉄DD13形に類似する[3]。当初自重53tであったためDD53形であったが、1979年(昭和54年)に機関をDMF31SB(500ps/1500rpm)からDMF31SBI(600ps/1500rpm)に換装し56tとなったため同時に改番された[11]。1993年(平成5年)から1997年(平成9年)にかけて、信頼性向上を目的として機関が直噴式のDMF31SDI(600ps)に再換装されている[3]。なお、DD5652は2023年2月に廃車されている[12]。
- DD56形(DD5601)
- DD53形(当時)検査時の輸送力維持を目的として、1977年(昭和52年)6月に新潟鐵工所で製造されたセンターキャブ式のディーゼル機関車[3]。56t機で機関は当初DMF31SBI(600ps/1500rpm)を2基搭載していたが[11]、1995年(平成7年)12月に直噴式DMF31SDI(600ps)へ換装された[3]。
- DD56形(DD5602)
- DD5652の代替機として2023年に新潟トランシスで製造された[13][12]。
- ホキ100形 (101・102・105 - 107・109 - 114・116・119 - 138・140 - 152[10])
- 小野田セメント大船渡工場への石灰石輸送用として新造された35 トン 積の貨車(ホッパ車)である。1960年(昭和35年)に13両が配備され、2000年(平成12年)まで増備された。国鉄セキ3000形貨車との同一設計である[10]が、両側の下部の荷卸開戸が電動式となっているのが特徴(国鉄セキ3000は手回し式の手動[10])。1996年(平成8年)より保守簡略化の観点から台車がコロ軸受けのTR213C形・TR225形へ交換されている[10]。
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DD56形5651・5601・5653号機 (2006年 盛駅)
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ホキ100形(2006年 盛駅)
過去の車両
編集- キハ202
- 1968年(昭和43年)に新潟鐵工所で製造されたオリジナルの気動車で、全長12m、2扉の小型車両であった。盛 - 岩手石橋間の旅客輸送に運用された。1992年(平成4年)4月の旅客輸送廃止後はしばらく軽入換に使用された後に休車、1997年(平成9年)3月に廃車となった[3]。その後は盛駅構内に留置されていたが、2002年(平成14年)2月に長安寺駅側線で解体された[14][3]。
- キハ301
- 詳細は「夕張鉄道キハ200形気動車」を参照
- 夕張鉄道から1975年(昭和50年)に譲り受けた。旅客輸送廃止後は個人に売却されたものの、引渡しがされず結局2001年(平成13年)7月に長安寺駅側線で解体された[3]。
- DB15形 (DB1511)
- 1957年(昭和32年)に新三菱重工業で製造されたL字形の岩手開発鉄道最初のディーゼル機関車。1973年(昭和48年)廃車。
- DC38形 (DC3821)
- 1973年(昭和48年)廃車。
- DD38形 (DD3831 - 3832)
- 1960年(昭和35年)に東洋工機で製造されたセンターキャブ式のディーゼル機関車。DD53形の登場までの主力。1974年(昭和49年)廃車。
- DD43形 (DD4341)
- 1963年(昭和38年)に東洋電機で製造されたセンターキャブ式のディーゼル機関車。故障が多かったという。1985年(昭和60年)廃車。
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キハ202。右後方がキハ301。
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キハ301(盛駅、1992年2月19日)
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留置されていたDD43形、後方はキハ301(盛駅、1992年2月19日)
関係会社
編集- 岩手開発産業株式会社
- 開発運輸株式会社
- 一般貨物自動車運送事業およびタイヤ販売業を行っている。かつては貸切バス事業を行っていたが、2022年に廃止した。
- 株式会社カイハツ総合設備
脚注
編集注釈
編集- ^ 貨物専業では唯一同協会に加盟している。また、岩手県では唯一の同協会加盟事業者であり、同県で旅客営業を行う事業者に限れば同協会に加盟している事業者は存在しない。
出典
編集- ^ a b c d e f g 鉄道統計年報平成29年度版 - 国土交通省
- ^ 令和元年度鉄道要覧
- ^ a b c d e f g h i j k 斎藤 2007, p. 180.
- ^ 「鉄道免許状下付」『官報』1939年6月21日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 『地方鉄道及軌道一覧. 昭和18年4月1日現在』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 『帝国銀行会社要録. 昭和15年(28版)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ a b c d e f 「石灰石輸送を通じ、震災復興に貢献し地域の経済を支える」(PDF)『みんてつ』第72巻冬号、日本民営鉄道協会、2020年、11頁。
- ^ 寺田 1990, p. 40.
- ^ a b 開発運輸株式会社 会社案内
- ^ a b c d e f 斎藤 2007, p. 181.
- ^ a b 藤岡雄一「THE GUIDE OF 全国私鉄ディーゼル機関車」『鉄道ピクトリアル』、電気車研究会、1996年5月。
- ^ a b 当該ツイート岩手開発鉄道twitter 2023年7月27日
- ^ 当該ツイート岩手開発鉄道twitter 2023年7月27日
- ^ 「保存車・廃車体一覧3 補遺【第6回】」『RAIL FAN』第49巻第3号、鉄道友の会、2002年3月号、20頁。
参考文献
編集- 寺田裕一『日本のローカル私鉄』企画室ネコ(現:ネコ・パブリッシング)、1990年10月。ISBN 4-87366-064-5。
- 寺田裕一『日本のローカル私鉄2000』ネコ・パブリッシング、2000年8月。ISBN 4-87366-207-9。
- 寺田裕一『ローカル私鉄車輌20年 東日本編』JTB(現、JTBパブリッシング)〈JTBキャンブックス〉、2001年10月。ISBN 4-533-03982-0。
- 斉藤幹雄「岩手開発鉄道の現況」『鉄道ファン2007年4月号』第47巻第4号、交友社、2007年4月、180-185頁。
外部リンク
編集- 岩手開発鉄道株式会社 - 公式サイト
- 岩手開発鉄道株式会社【公式】 (@kaihatsurailway) - X(旧Twitter)