猪口孝
日本の政治学者
猪口 孝(いのぐち たかし、1944年1月17日 - )は、日本の政治学者。前新潟県立大学学長、東京大学名誉教授。専門は、政治学・国際関係論。政治学博士(マサチューセッツ工科大学)(1974年)。
人物
編集新潟県新潟市生まれ。英語・中国語・韓国語・ロシア語など多言語に堪能。2000年から2002年まで日本国際政治学会理事長を務める。
1982年、『国際政治経済の構図』でサントリー学芸賞受賞。1987年に大嶽秀夫、村松岐夫ともに雑誌『レヴァイアサン』を共同で創刊し、実証主義的政治学の発展に貢献した。2018年、日本政治法律学会より現代政治学会賞を受賞[1]。
イラク戦争については「孤立主義が深刻になれば、日本は平和路線の転換を余儀なくされる」という認識のもと、日本政府は米国支持を堅持すべきとの主張を展開した[2]。自衛隊のイラク派遣もまた支持した。
2023年秋の叙勲において瑞宝中綬章を受章した[3][4]。
妻は参議院議員(元上智大学教授)の猪口邦子(馴れ初めについては邦子の著書『くにこism』で確認できる)。娘が2人(双子)いる。
略歴
編集学歴
編集- 1959年:新潟市立寄居中学校卒業(後輩に、拉致被害者の横田めぐみがいる。)
- 1962年:新潟県立新潟高等学校卒業
- 1966年:東京大学教養学部卒業
- 1968年:同大学院修士課程修了(指導教官は衛藤瀋吉)
- 1974年:Ph.D(マサチューセッツ工科大学)
研究歴
編集- 1969年:上智大学外国語学部助手
- 1974年:同助教授
- 1977年:東京大学東洋文化研究所助教授
- 1977年 - 1978年:ジュネーヴ大学国際問題高等研究所客員教授(先に研究員として赴任していた舛添要一が生活の世話をしたという[5])
- 1983年 - 1984年:ハーバード大学国際問題研究所客員研究員
- 1986年:オーストラリア国立大学豪日研究センター上級研究員
- 1988年:東京大学東洋文化研究所教授
- 2004年:東京大学を定年退官、名誉教授になる。
- 2005年:中央大学法学部教授(同公共政策大学院教授兼任)
- 2009年:新潟県立大学学長( - 2017年)
- 2017年:桜美林大学アジア文化研究所 所長 兼 特別招聘教授
学外における役職
編集著作
編集単著
編集- 『外交態様の比較研究――中国・英国・日本』(巌南堂書店, 1978年)
- 『国際政治経済の構図――戦争と通商にみる覇権盛衰の軌跡』(有斐閣, 1982年)
- 『現代日本政治経済の構図――政府と市場』(東洋経済新報社, 1983年)
- 『社会科学入門――知的武装のすすめ』(中央公論社[中公新書], 1985年)
- 『国際関係の政治経済学――日本の役割と選択』(東京大学出版会, 1985年)
- 『ただ乗りと一国繁栄主義をこえて――転換期の世界と日本』(東洋経済新報社, 1987年)
- 『国家と社会』(東京大学出版会, 1988年)
- 『交渉・同盟・戦争――東アジアの国際政治』(東京大学出版会, 1990年)
- Japan's International Relations, (Pinter, 1991).
- 『現代国際政治と日本――パールハーバー50年の日本外交』(筑摩書房, 1991年)
- 『現代日本外交――世紀末変動のなかで』(筑摩書房, 1993年)
- 『日本――経済大国の政治運営』(東京大学出版会, 1993年)
- 『アジア太平洋の戦後政治』(朝日新聞社[朝日選書], 1993年)
- Japan's Foreign Policy in an Era of Global Change, (Pinter, 1993).
- 『世界変動の見方』(筑摩書房[ちくま新書], 1994年)
- 『政治学者のメチエ』(筑摩書房, 1996年)
- 『アメリカ大統領の正義』(NTT出版, 2000年)
- Global Change: A Japanese Perspective, (Palgrave, 2001).
- 『地球政治の構想』(NTT出版, 2002年)
- 『アジア・太平洋世界』(筑摩書房, 2002年)
- 『現代日本政治の基層』(NTT出版, 2002年)
- 『日本政治の特異と普遍』(NTT出版, 2003年)
- 『「国民」意識とグローバリズム――政治文化の国際分析』(NTT出版, 2004年)
- 『国際政治の見方――9・11後の日本外交』(筑摩書房[ちくま新書], 2005年)
- Japanese Politics: An Introduction, (Trans Pacific Press, 2005).
- 『トンボとエダマメ論――何が夢をかなえるのか』(西村書店, 2007年)
- 『シリーズ国際関係論(5)国際関係論の系譜』(東京大学出版会, 2007年)
- 『英語は道具力』(西村書店, 2008年)
- 『実証政治学構築への道 シリーズ「自伝」my life my world 』(ミネルヴァ書房, 2012年)
共著
編集- (綿貫譲治・三宅一郎・蒲島郁夫)『日本人の選挙行動』(東京大学出版会, 1986年)
- (岩井奉信)『「族議員」の研究――自民党政権を牛耳る主役たち』(日本経済新聞社, 1987年)
- (猪口邦子)『世界を読む――Book review 1990』(筑摩書房, 1990年)
- (黒川清・板垣雄三・田辺功)『日本(人)の洗濯(を)考えるエッセンス』(西村書店, 2005年)
- Political Cultures in Asia and Europe: Citizens, States and Societal Values, with Jean Blondel, (Routledge, 2006).
- 『アジアとヨーロッパの政治文化』(岩波書店, 2008年)
- Citizens and the State: Attitudes in Western Europe and East and Southeast Asia, with Jean Blondel, (Routledge, 2008).
編著
編集- Japan's Asian Policy: Revival and Response, (Palgrave, 2002).
- 『日本のアジア政策――アジアから見た不信と期待』(NTT出版, 2003年)
- 『国際関係リーディングズ』(東洋書林, 2004年)
- 『アジア学術共同体――構想と構築』(NTT出版, 2005年)
- Human Beliefs and Values in Incredible Asia: South and Central Asia in Focus Country Profiles and Thematic Analyses Based on the AsiaBarometer Survey of 2005, (明石書店, 2008).
共編著
編集- The Changing International Context, co-edited with Daniel I. Okimoto, (Stanford University Press, 1988).
- Japanese Politics Today: Beyond Karaoke Democracy?, co-edited with Purnendra Jain, (Macmillan Education Australia, 1997).
- North-East Asian Regional Security: the Role of International Institutions, co-edited with Grant B. Stillman, (United Nations University Press, 1997).
- (P・グレビッチ、G・プリントン)『冷戦後の日米関係――国際制度の政治経済学』(NTT出版, 1997年)
- The Changing Nature of Democracy, co-edited with Edward Newman and John Keane, (United Nations University Press, 1998).
- 『現代民主主義の変容――政治学のフロンティア』(有斐閣, 1999年)
- Cities and the Environment: New Approaches for Eco-societies, co-edited with Edward Newman and Glen Paoletto, (United Nations University Press, 1999).
- International Security Management and the United Nations, co-edited with Muthiah Alagappa, (United Nations University Press, 1999).
- Democracy, Governance, and Economic Performance: East and Southeast Asia, co-edited with Ian Marsh and Jean Blondel, (United Nations University Press, 1999).
- Japanese Foreign Policy Today: A Reader, co-edited with Purnendra Jain, (Palgrave, 2000).
- American Democracy Promotion: Impulses, Strategies, and Impacts, co-edited with Michael Cox and G. John Ikenberry, (Oxford University Press, 2000).
- 『アメリカによる民主主義の推進――なぜその理念にこだわるのか』(ミネルヴァ書房, 2006年)
- (大澤真幸・岡沢憲芙・山本吉宣・スティーブン・R・リード)『政治学事典』(弘文堂, 2000年)
- Reinventing the Alliance: U. S.-Japan Security Partnership in an Era of Change, co-edited with G. John Ikenberry, (Palgrave Macmillan, 2003).
- Global Governance: Germany and Japan in the International System, co-edited with Saori N. Katada and Hanns W. Maull, (Ashgate, 2004).
- (ミゲル・バサネズ・田中明彦・ティムール・ダダバエフ)『アジア・バロメーター 都市部の価値観と生活スタイル――アジア世論調査(2003)の分析と資料』(明石書店, 2005年)
- (田中明彦・恒川惠市・薬師寺泰蔵・山内昌之)『国際政治事典』(弘文堂, 2005年)
- The Uses of Institutions: The U.S., Japan, And Governance in East Asia, co-edited with G. John Ikenberry, (Palgrave, 2007).
- Governance and Democracy in Asia, co-edited with Matthew Carlson, (Trans Pacific Press, 2007).
- (田中明彦・園田茂人・ティムール・ダダバエフ)『アジア・バロメーター 躍動するアジアの価値観――アジア世論調査(2004)の分析と資料』(明石書店, 2007年)
- Globalisation, Public Opinion and the State: Western Europe and East and Southeast Asia, co-edited with Ian Marsh, (Routledge, 2008).
- (マシュー・カールソン)『アジアの政治と民主主義――ギャラップ調査を分析する』(西村書店, 2008年)
訳書
編集- デイヴィッド・ヘルド編『論争グローバリゼーション――新自由主義対社会民主主義』(岩波書店, 2007年)
脚注
編集- ^ 学会賞 歴代受賞者一覧日本政治法律学会
- ^ 毎日新聞2003年3月17日
- ^ 『官報』号外232号、令和5年11月6日
- ^ “秋の叙勲、受章者の横顔 石井幹子さん、猪口孝さん”. 朝日新聞. (2023年11月3日) 2023年11月5日閲覧。
- ^ 日本経済新聞2014年3月12日
- ^ “評議員、役員等”. 日本国際フォーラム. 2014年2月25日閲覧。
外部リンク
編集- Takashi Inoguchi's Official Web Page
- 猪口孝 - KAKEN 科学研究費助成事業データベース
- 論文一覧(KAKEN、CiNii)
- 猪口孝 - J-GLOBAL
- 猪口孝 - researchmap
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