HP 48 シリーズ
HP 48 シリーズはヒューレット・パッカード社(HP社)が開発したプログラミング可能なグラフ関数電卓である。HP-28 シリーズの後継機種である。
1990年~2003年の間に製造されていた。2003年に製造終了するとHP 49/50 シリーズに置き換えられた。
概要
編集HP 48 シリーズは逆ポーランド記法入力方式とRPL (Reverse Polish Lisp) プログラミング言語を搭載しており、1990年 - 2003年まで製造された。
HP-28 シリーズと比べて液晶画面の大型化(137×32画素 → 131×64画素)が行われている。さらにHP-28シリーズの欠点であった外部インターフェースの欠如も改善され、シリアル通信と赤外線通信が可能である。速度も向上し、機能も増えている。
シリーズ全機種として HP 48S, HP 48SX, HP 48G, HP 48GX, HP 48G+がある。 GモデルはSモデルの改良版を意味している。 Xの付いたモデルはスペシャルRAM(拡張メモリ)とROMカード(ソフトウェアアプリケーション)によって拡張できる。 SXとSモデルの内蔵メモリの容量は同一であるが、拡張性が異なる。 GXモデルはGモデルよりも内蔵メモリがさらに拡張されている。 G+モデルは内蔵メモリのみを搭載しており、スペシャルRAMやROMカードの拡張はできない。
なお、HP 48gII(2004年)はHP 48 シリーズではなく、HP 49g+に近い機種である。
HP 48シリーズのために開発されたハードウェアアーキテクチャはHP 38Gの元になった(ただし、HP 38GはHP 48 シリーズと大幅に異なるユーザーインターフェースを採用している)。HP 48 シリーズのハードウェアとソフトウェアの設計はHP社の他の電卓の影響を強く受けている。特にHP-18CとHP-28 シリーズから強い影響を受けている。
HP 48シリーズはHP-28 シリーズのようなクラムシェル型のケース(折りたたみ式のケース)を採用しなかったため、片手で持ちやすくなった。しかしそれにより、機能数の多いHP 48シリーズの方がキー数が大幅に少なくなった。具体的には、HP 48 シリーズのキー数は49個であり、HP-28シリーズの72個(そのうち文字入力専用キーが35個)から大幅に減っている。その結果、少ないキーに多くの機能を割りあてる必要が生じたため、シフトキーが1種類から3種類(アルファベットキー、左シフトキー、右シフトキー)に増加している。
モデル一覧/販売開始〜製造終了期間
編集最初のモデルHP 48SXは1990年3月6日に発売された。
技術仕様
編集全モデル共通仕様(一部Xモデルのみの仕様を含む)
編集- CPU : HP Saturn
- 画面解像度 : 131×64 画素
- 通信ポート : 4ピン RS-232 (シリアルポート)あるいは赤外線ポート(IrDAではない)
- データバス幅 : 8bit(外部アクセス時)
- 最大アドレス幅(4bit単位) : 20bit
- 論理アドレス空間 : 512KB
- 最大レジスタサイズ : 64bit (ワーキングレジスタとスクラッチレジスタ共通)
- 利用可能なカードポート数 : 2(Xモデルのみ)
- 拡張カードピン数 : 40(Xモデルのみ)
HP 48S/HP 48SX 仕様
編集- CPUクロック周波数 : 2 MHz
- メモリクロック周波数 : 2 MHz
- CPUコード名 : Clarke (Saturn 1LT8 core)
- 通信プロトコル : シリアル通信はKermitプロトコル、赤外線通信は独自方式
- 内蔵ROM : 256 KB
- 内蔵RAM : 32 KB
- 拡張カード1枚当たりの最大追加メモリ : 128KB (48SXのみ)
- ROMバージョン : A, B, C, D, E, F, [3][4] J
HP 48G/HP 48GX/HP 48G+ 仕様
編集- CPUクロック周波数 : 3.68 ~ 4 MHz (一般的には4 MHzとされている)
- メモリクロック周波数 : 2 MHz
- CPUコード名 : Yorke (Saturn 1LT8 core)
- 通信プロトコル : シリアル通信はKermitあるいはXmodemプロトコル、赤外線通信は独自方式
- 内蔵ROM : 512 KB
- 内蔵RAM : 32 KB (48G) または 128 KB (48G+/48GX)
- 拡張カードポート1の最大追加メモリ : 128KB(48GXのみ)
- 拡張カードポート2の最大追加メモリ : 4 MB (48GXのみ。一度にアクセスできるのは128 KBだけでバンク切替が必要)
- ROMバージョン : K, L, M, P, R
英語版記事によると、温度に従ってCPUクロック周波数が変化するという主張がある。
HP 48G シリーズ設計チームの技術者の一人であるデイヴ・アーネットによると、4MHz CPUのクロック周波数は2種類あるという。一つは仕様に近くだいたい3.93~3.94 MHz付近であり、拡張可能モデル(48GX)のために用意された。もう一つは仕様よりもわずかに低く、拡張不能モデル(48G)に使われた。最終的には、拡張不能モデル(48G)も改良されて4 MHzに近いクロックのCPUを装備するようになった。温度の影響はほとんど無視できるとのことである。
以上のCPUクロック周波数のことは英語版記事によるが、出典が不明確である。
プログラミング
編集RPLについてはRPL (プログラミング言語)を参照
HP 48 シリーズはスタックベースプログラミング言語RPLをサポートしている。RPL (Reverse Polish Lisp) は逆ポーランド記法 (Reverse Polish Notation) とLisp言語を組合せた言葉と考えられる。ただし、実際の文法はForthに似ている。
RPLはスタックベースプログラミング言語にリストと関数の概念を追加しており、評価していないコードを引数として関数に渡すことができる。あるいは、関数が終わる時にスタック上に評価していないコードを置いてそのコードを呼び出し元に返すこともできる。
RPLは2つに分類できる。User RPLとSystem RPLである。
User RPLはユーザーが電卓上で直接プログラミングできる。
System RPLは外部のコンパイラが必要である。このコンパイラはサードパーティのユーティリティを使えば、電卓上で実行できるかもしれないが、通常はPC上で実行する。[5]
2つの言語は低レベルな操作ができるかどうかで異なる。
User RPLは引数チェックをしないコマンドを隠蔽している。その結果として電卓をクラッシュさせることはない(それゆえにSytem RPLよりも低速度である)。
一方でSystem RPLのプログラムが不正な引数でコマンドを実行すると、たいていの場合、電卓がクラッシュし、メモリの完全リセットが必要になる。
HP 48 は機械語で直接プログラムすることも可能である。
エミュレーター
編集- Emu48 for Windows
- X48 for Mac OS X, POSIX (unix/linux)
- m48 – HP48 emulator for the iPhone, based on Emu48
- Droid48 – HP48 Emulator for Android OS, based on X48
- An HP48 emulator – decompiler for Unix/Linux or Windows (using Cygwin) by Paul Courbis
関連項目
編集- HP Saturn(HP 48 シリーズのCPU)
- RPL (プログラミング言語)
外部リンク
編集出典
編集- ^ a b c "HP 48G Series – User's Guide" http://www.hpcalc.org/details/3937
- ^ 「1893年に創設され1993年の今日まで続くASEE(アメリカ工学教育協会)は2世紀目も世界を作る。」のような意味であろうか。ASEEが1993年に創立100周年なので、次の100年(2世紀目)も活動するということだろう。
- ^ "HP 48G Series – Advanced User's Reference Manual" http://www.hpcalc.org/details/6036
- ^ "HP48 Machine Language" http://www.courbis.fr/Data/Books/Pdfs_72/hp48ml/hp48ml_72x72_001_062.pdf
- ^ "Programming in System RPL" http://www.hpcalc.org/details/5142