「幻覚剤」の版間の差分
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中南米の[[メキシコ]]には、幻覚をもたらす成分の[[シロシビン]]を含む俗に[[マジックマッシュルーム]]と呼ばれるキノコが自生し、シャーマンにより宗教儀式や治療に用いられるている。メキシコは、16世紀初頭にスペインによって植民地化され、テオナナカカトルと呼ばれる神のキノコは、カトリック教会によって規制された。アメリカ大陸のシャーマンは[[アヤワスカ]]や[[ペヨーテ]]を用いている。 |
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[[ペルー]]では幻覚成分の[[メスカリン]]を含むサボテンには[[ペヨーテ]]や[[サンペドロ]]がある。ペヨーテは乾燥させて食され、サンペドロは煮詰めた成分が摂取される。アマゾン熱帯雨林のシャーマンは、植物を煮出して[[アヤワスカ]]を作るが、これには、[[ハルマラ]]と[[DMT]]が含まれ、相互作用で効力を発揮する。 |
[[ペルー]]では幻覚成分の[[メスカリン]]を含むサボテンには[[ペヨーテ]]や[[サンペドロ・サポテン|サンペドロ]]([[:en:San Pedro cactus|San Pedro cactus, Echinopsis pachanoi]])がある。ペヨーテは乾燥させて食され、サンペドロは煮詰めた成分が摂取される。アマゾン熱帯雨林のシャーマンは、植物を煮出して[[アヤワスカ]]を作るが、これには、[[ハルマラ]]と[[DMT]]が含まれ、相互作用で効力を発揮する。 |
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1898年に、ドイツ人化学者のヘフターがメスカリンを発見。1912年、ドイツのメルク社が[[メチレンジオキシメタンフェタミン]](MDMA)を合成したが社外に発表されなかった。1938年にスイスのサンドス研究所の化学者である[[アルバート・ホフマン (化学者)|アルバート・ホフマン]]が[[リゼルグ酸ジエチルアミド]](LSD-25)を合成し、その後5年間研究されなかったが1943年にその幻覚作用が発見された<ref>A.ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』 堀正訳、榎本博明訳、福屋武人、新曜社、1984年、ISBN 978-4788501829。16-20頁。</ref>。1960年代に、化学者の[[アレクサンダー・シュルギン|アレクサンダー・サーシャ・シュルギン]]が[[MDMA]]を合成したが他の強い作用をもたらす化合物を探していたため研究されず、1973年に別の研究者がサーシャの方法で合成し広まっていった<ref>「an interview with nicholas saunders」『zavtone』2号、97年4月、22-23頁。</ref>。 |
1898年に、ドイツ人化学者のヘフターがメスカリンを発見。1912年、ドイツのメルク社が[[メチレンジオキシメタンフェタミン]](MDMA)を合成したが社外に発表されなかった。1938年にスイスのサンドス研究所の化学者である[[アルバート・ホフマン (化学者)|アルバート・ホフマン]]が[[リゼルグ酸ジエチルアミド]](LSD-25)を合成し、その後5年間研究されなかったが1943年にその幻覚作用が発見された<ref>A.ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』 堀正訳、榎本博明訳、福屋武人、新曜社、1984年、ISBN 978-4788501829。16-20頁。</ref>。1960年代に、化学者の[[アレクサンダー・シュルギン|アレクサンダー・サーシャ・シュルギン]]が[[MDMA]]を合成したが他の強い作用をもたらす化合物を探していたため研究されず、1973年に別の研究者がサーシャの方法で合成し広まっていった<ref>「an interview with nicholas saunders」『zavtone』2号、97年4月、22-23頁。</ref>。 |
2008年4月9日 (水) 12:26時点における版
幻覚剤(げんかくざい、Psychedelic drugs)とは、脳神経系に作用して幻覚(現実には存在しない異常な感覚)を摂取者にもたらす薬物のことである。ハルシノジェン(Hallucinogen)や、サイケデリックス、エンセオゲン(entheogen)とも呼ばれる。その幻覚体験はサイケデリックと形容される。宗教的な儀式や踊り、シャーマンや精神科医による心理療法に用いられる。宗教、文学作品や音楽、アートといった文化そのものに影響を与えてきた。1960年以降、幻覚剤は所持や使用が法律で禁止されているものも多い。
植物性のアルカロイドには、幻覚をもたらすものがあり、古来から様々な目的で用いられてきた。幻覚剤を摂取することによって、意識状態に変容が起こり変性意識状態といった意識の状態に導かれる。その体験が精神性に影響を与えることもある。
中南米のメキシコには、幻覚をもたらす成分のシロシビンを含む俗にマジックマッシュルームと呼ばれるキノコが自生し、シャーマンにより宗教儀式や治療に用いられるている。メキシコは、16世紀初頭にスペインによって植民地化され、テオナナカカトルと呼ばれる神のキノコは、カトリック教会によって規制された。アメリカ大陸のシャーマンはアヤワスカやペヨーテを用いている。 ペルーでは幻覚成分のメスカリンを含むサボテンにはペヨーテやサンペドロ(San Pedro cactus, Echinopsis pachanoi)がある。ペヨーテは乾燥させて食され、サンペドロは煮詰めた成分が摂取される。アマゾン熱帯雨林のシャーマンは、植物を煮出してアヤワスカを作るが、これには、ハルマラとDMTが含まれ、相互作用で効力を発揮する。
1898年に、ドイツ人化学者のヘフターがメスカリンを発見。1912年、ドイツのメルク社がメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)を合成したが社外に発表されなかった。1938年にスイスのサンドス研究所の化学者であるアルバート・ホフマンがリゼルグ酸ジエチルアミド(LSD-25)を合成し、その後5年間研究されなかったが1943年にその幻覚作用が発見された[1]。1960年代に、化学者のアレクサンダー・サーシャ・シュルギンがMDMAを合成したが他の強い作用をもたらす化合物を探していたため研究されず、1973年に別の研究者がサーシャの方法で合成し広まっていった[2]。 サーシャは、既存のドラッグの分子構造を若干変えた多くのデザイナーズドラッグを多く作り出したが、その中に幻覚剤も多く含まれている。
1940年代にLSDが研究目的で出回りはじめ、後のヒッピームーブメントではLSDによる幻覚体験がその素地となっていた。その後、アルバート・ホフマンはシロシビンも合成した。
1960年代、ハーバード大学で幻覚剤の研究を行っていた心理学者のティモシー・リアリーが、刑務所の受刑者に対して行った臨床実験では、シロシビンの摂取によって神や愛について語られるようになり対立がなくなった[3]。MDMAは幻覚はもたらさず、共感性を高めるという特徴がある。心的外傷後ストレス障害の患者に対して共感性を高めるといわれるMDMAを投与する治療研究が行われている。幻覚剤の研究家であるテンレス・マッケナは、6時間で5年分の心理療法をやってしまうドラッグだと表現している[4]。
1960年代には、LSDはアシッドと俗称されアシッド・ロックといった音楽シーンも作り出した。LSDは1966年にアメリカの法律で禁止されるまでは精神療法の研究にも用いられた。MDMAは、1980年代後半のイギリスのレイヴシーンに影響を与えた。1980年代より、電子音音楽シーンからアシッド・ハウスとしてリバイヴァルされた。1990年前後にはインドではじまったゴアで行われていたダンス・パーティからサイケデリックトランスへと発展した。
日本では1990年代後半に脱法ドラッグとして流通したが、その後取締りが強化され法律や条例による規制が行われていった。
化学合成されたものはケミカルドラッグ、天然の植物の状態のものはナチュラルドラッグと呼ばれる。
代表的な幻覚剤
- ケミカルドラッグ
- ナチュラルドラッグ (括弧内は成分名)
- マジックマッシュルーム (シロシビン)
- ペヨーテ (メスカリン)
- アヤワスカ (ハルマリン、DMT)
- サルビア・ディビノルム (サルビノリンA)
- ベニテングタケ (イボテン酸、ムッシモール)
- エペナ樹脂、ヨポ (DMT)
- モーニング・グローリー、オロリウキ (LSA)
- イボガ (イボガイン)
- デザイナーズドラッグ
脚注
- ^ A.ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』 堀正訳、榎本博明訳、福屋武人、新曜社、1984年、ISBN 978-4788501829。16-20頁。
- ^ 「an interview with nicholas saunders」『zavtone』2号、97年4月、22-23頁。
- ^ マーティン・トーゴフ 『ドラッグ・カルチャー-アメリカ文化の光と影(1945~2000年)』 宮家あゆみ訳、清流出版2007年。ISBN 978-4860292331。121頁。(原著 Can't Find My Way Home)
- ^ キャシー・ソコル「コンピュータと人と幻覚剤」樋口真理訳『エスクワイア日本語版』1998年3月、46-52頁。
関連項目
参考文献
- 武井秀夫、中牧弘允 『サイケデリックスと文化-臨床とフィールドから』 春秋社、2002年。ISBN 978-4393291504。
- レスター グリンスプーン、ジェームズ・B. バカラー 『サイケデリック・ドラッグ-向精神物質の科学と文化』 杵渕幸子訳、妙木浩之訳、工作舎、2000年。ISBN 978-4875023210。
- 高木繁光 「唯物論的サイケデリックの系譜」同志社大学言語文化学会『言語文化』7巻2号、2004年、12月。 『大学・研究所等紀要(2) 』225~240頁。