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Z8000

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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Olivetti M20 のマザーボード上のZ8001
東ドイツ製のZ8001クローン MME UB8001C

Z8000シリーズは、ザイログ社が1979年に発売した16ビットマイクロプロセッサである。コンピューター向けのZ8001と組込みシステム向けのZ8002がある。

Z8000シリーズは1979年初めに登場した。これはIntel 8086(1978年4月)とMC68000(1979年9月)が登場した時期の中間にあたる[1]

アーキテクチャ設計はBernard Peutoが行い、論理設計と物理設計は嶋正利が数名の人々と共に行った。Z80とはバイナリレベルの互換性はなく、人気を博したとは言えないものの1990年代までそれなりの需要があった。

Z16C00シリーズは、Z8000シリーズのCMOS版である[2]。Z16C01とZ16C02は、それぞれZ8001とZ8002に相当する[3]

昭和59年(1984年)、東芝がマイクロプロセッサーTLCS-Z8000を開発。

機能

基本的には16ビットアーキテクチャだが、Z8001では7ビットのセグメントレジスタによるアドレス拡張を行いZ8010(MMU)で実アドレスに変換し、アドレス空間を8Mバイトまで拡張している。Z8002は、組込みシステム向けであり、セグメントがないので、メモリ空間は64KBに制限される。

レジスタセットは、R0からR15までの16本の16ビットレジスタから成り、命令によってこれを8ビット16ビット32ビット64ビットのレジスタとして使用する[4]。32ビットレジスタとしては8個(RR0, RR2, RR4, RR6, RR8, RR10, RR12, RR14)、64ビットレジスタとしては4個(RQ0, RQ4, RQ8, RQ12)が利用できた[5]。レジスタは完全に汎用で直交性があるが、R15はスタックポインタとして使われ、R14はスタックセグメントに使われる。ただし、アセンブラレベルでのZ80との互換性維持のため[要出典]、R0からR8までの8本の汎用レジスタは8ビット単位で使用できた。インデックスレジスタとして使用するためR8からR15までの8本のレジスタはセグメントレジスタ+ポインタとしての意味を持っていた。

特権モード設定があり、ユーザモードとスーパバイザモードがあった。

Z80のように、Z8000はDRAMリフレッシュ回路を内蔵していた。設計者を惹き付ける特徴を備えていたものの、全体的に見てZ8000は十分高速とは言えず、エラッタも散見され、結局のところx86ファミリの影に隠れてしまった。

後継の32ビット版としてZ80000がある。

インターフェースLSI

全二重シリアル/パラレルインターフェースLSIとして、128バイトのFIFOメモリが付いた LH8072[6] がシャープから1983年に発売された[7]。GPIBインターフェースLSIとして、LH8073[8]があった。

組込みシステムでの採用例

Z8000の実際の使用例としてはナムコが開発したアーケードゲームポールポジション」が知られている。これにはふたつのZ8002(メモリ空間が64Kバイトの、セグメントのないバージョン)が使われていた。

軍事機器に使われているという報告がある[9]。MIL-STD-883 Class Bに対応したため、軍事用にも用いられてきたようである(セラミックチップにCMBの型番を表記)。事実として、MOS仕様だったため(i4004i8008i8080などはMOSでありながら、TTLレベル動作)ノイズなどにも強く、航空機などの機器類にも搭載された。

コンピュータシステムでの採用例

1980年代初め、Z8000はデスクトップ型UNIXマシンでよく使われた。これはグラフィックディスプレイを備えたワークステーションというよりも、多数のシリアルポートを備えたサーバとしてネットワークが普及する以前のリソース(ディスク、プリンタ)共有マルチユーザーシステムとして使われた。

Z8000ベースのコンピュータシステムとしては、ザイログ自体が発売した System 8000 シリーズのほかに、以下のようなものがある。

  • 1980年1月に公開された Onyx Systems英語版 の C8000 は、初期のUNIXマルチユーザーシステムで、シリアルポートを8個備えていた(価格は25,000ドル)[10]
  • オリベッティ M20, M30, M40, M50, M60[11]
  • 中央電子株式会社は1981年にUNIX v7を搭載したCEC8000を発売した。Z8010 MMUのバグを回避するためMMUを2つ搭載していた。
  • コモドールUnix系OSを搭載した Commodore 900英語版 を開発していたが[1]Amigaを買収したことでプロジェクトは中止された。
  • Z8000は、AMDシャープがセカンドソースとして製造し[1]、シャープはZ8000を搭載したシステムも発売していた。
  • ヤマハ YIS (PU-1-20)のグラフィックコントローラー

ザイログの System 8000 ではZEUS(Zilog Enhanced Unix System)というUnix系OSが動作する。ZEUSはVersion 7 Unixからの派生で、'the Berkeley Enhancements'と呼ばれる拡張を含んでいる。ZEUSには RMCobol(Ryan McFarland Cobol)というCOBOLが含まれており、多くのビジネスアプリケーションがすばやく移植されたが、長期的な成功をもたらすことはなかった。

CP/MのZ8000版であるCP/M-8000や、Z8000向けのXENIXも発売されている[12]

脚注・出典

  1. ^ a b c ZILOG Z8000 (APRIL 1979)”. Digital History: Time Line. old-computers.com. 2009年7月16日閲覧。
  2. ^ http://www.itofamily.com/ito/collections/16bit/z8002/index.html
  3. ^ The Z8000 / Z80,000 / Z16C00 CPU homepage
  4. ^ http://www.st.rim.or.jp/~nkomatsu/zilog/Z8000CPU.html
  5. ^ 禿節史、喜田祐三、田邊皓正、藤岡旭『16ビットマイクロプロセッサ』丸善株式会社、1981年6月30日、84頁。 
  6. ^ SHARP 1986 SEMICONDUCTOR DATA BOOK”. 2024年1月1日閲覧。
  7. ^ ASCII 1983年4月号, p. 91.
  8. ^ Sharp 1986 Semiconductor Data Book”. 2024年5月2日閲覧。
  9. ^ Z8000”. TechEncyclopedia. TechWeb. 2009年7月16日閲覧。[リンク切れ]
  10. ^ Granneman, Scott. “Computing History 1968-Present”. 2009年7月16日閲覧。
  11. ^ Kranenborg, Jurjen; Elvey, Dwight K.; Grosssler, Christian. “The Z8000 / Z80,000 / Z16C00 CPU homepage”. 2009年7月16日閲覧。
  12. ^ Bezroukov, Nikolai (2008年11月15日). “XENIX -- Microsoft Short-lived Love Affair with Unix”. Softpanorama. 2009年7月16日閲覧。

参考文献

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