重友梨佐
| ||||
---|---|---|---|---|
2012年ロンドンオリンピックにて | ||||
選手情報 | ||||
フルネーム | 重友 梨佐 | |||
ラテン文字 | Risa Shigetomo | |||
国籍 | 日本 | |||
所属 | 天満屋 | |||
生年月日 | 1987年8月29日(37歳) | |||
生誕地 | 岡山県備前市 | |||
身長 | 168cm | |||
体重 | 50kg | |||
自己ベスト | ||||
1500m | 4分23秒49 (2005年) | |||
3000m | 9分24秒17 (2006年) | |||
5000m | 15分32秒41 (2006年) | |||
10000m | 33分25秒48 (2012年) | |||
ハーフマラソン | 1時間11分47秒 (2016年) | |||
マラソン | 2時間23分23秒 (2012年) | |||
編集 |
重友 梨佐(しげとも りさ、1987年8月29日 - )は、日本女子の陸上競技・元選手。専門種目は長距離走・マラソン。2012年ロンドンオリンピック、2015年世界陸上北京大会、2017年世界陸上ロンドン大会各女子マラソン日本代表。大阪国際女子マラソン2回優勝(2012年・2017年)など。
人物・経歴
[編集]学生時代まで
[編集]1987年8月29日、岡山県[1]備前市出身。小学校3年生時に陸上競技を始める[2]。備前市立備前中学校卒業後、全国高等学校駅伝競走大会では例年強豪チームの興譲館高等学校に入学。
高校時代は森政芳寿の指導を受ける。2年生時に第16回全国高校駅伝(2004年)に初出場し、2区を走って区間7位。新谷仁美(1区)から先頭でタスキを受けた重友は首位を守ったものの、チームはアンカーで逆転されて2位に終わる。3年生時にチームの主将を任されて第17回全国高校駅伝(2005年)に優勝[2]。前年に続いて2区に登場した重友は、再び新谷から先頭でタスキを受け、区間2位の好走で優勝に貢献した。興譲館高校卒業後は地元・岡山市の天満屋に入社[2]。
実業団入りと初マラソン
[編集]天満屋入社後は女子陸上競技部に所属、先輩の坂本直子(アテネオリンピック女子マラソン7位入賞)、中村友梨香(北京オリンピック女子マラソン13位)や、同興譲館高校の3年後輩に当たる小原怜(世界陸上北京大会女子10000m22位)らに混じって走り、地道に実力をつける。全日本実業団対抗女子駅伝競走大会では第30回(同回まで岐阜県開催)・第31回(当回から宮城県開催)と5区を走り2年連続区間賞を獲得[2]。特に第30回大会では、天満屋チームの初優勝にも貢献した。
初マラソンは当初2011年3月13日の名古屋国際女子マラソンを予定していたが、大会前々日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により大会が急遽中止に。1か月後、2011年4月のロンドンマラソンにスライド出場して初マラソンに挑んだが、調整失敗もあり2時間31分台で24位の結果に終わった[3]。
ロンドン五輪まで
[編集]2回目のマラソンとなった2012年1月29日の第31回大阪国際女子マラソンでは国内招待選手として出場。レース中盤まで、日本女子長距離走の第一人者である福士加代子と並走していたが、27km手前で遅れ始めた福士を振り切ってからは独走態勢となる。その後も大きく崩れることなく2時間23分23秒(当時日本女子マラソン歴代9位)の好タイムでマラソン初優勝を果たし、ロンドンオリンピック女子マラソン日本代表へ初選出された。天満屋の所属選手としては、2000年シドニーオリンピック代表・7位入賞の山口衛里、2004年アテネ五輪代表・坂本、2008年北京五輪代表・中村に続いて、4大会連続でオリンピックの女子マラソン日本代表となる。
しかし、2012年6月下旬頃に右足首を痛めるアクシデントが発生、練習不足のままで同年8月5日開催のロンドン五輪女子マラソンに強行出場。女子マラソン本番レースでは、15Km付近でいったん先頭集団の前に出る場面があったが、20Km手前付近で集団に全くついていけずに大きく離され、苦しいレースとなる。完走はなんとか果たしたが、結局2時間40分台の79位(当初)と惨敗だった(他木崎良子16位、尾崎好美19位で日本女子3選手ともメダル・入賞ならず)[4]。しかし、ロンドン五輪・女子マラソン開催より3年経過後の2015年11月、ウクライナ陸連は当初5着(ゴール記録は2時間24分32秒)だったタチアナ・ガメラの血液データを蓄積し変化を調べる「生体パスポート」の検査で異常値を示したため、ガメラをドーピング違反と判定。ガメラのロンドン五輪5位入賞の順位・ウクライナ記録をそれぞれ取り消したため、同五輪・女子マラソンの重友の79着の順位が78位に繰り上がった(他木崎は15位、尾崎も18位に繰り上げ)[5]。
ロンドン五輪から1年経過した、2013年8月25日に北海道マラソンに優勝を目指して出場するも、2時間51分台の13位と完敗(優勝は渡邊裕子)。それから約2か月後、2013年11月3日開催のニューヨークシティマラソンにエントリー(前年の同大会はハリケーンで中止)。中盤まで3位争いに加わるも徐々に後退、女子優勝のプリスカ・ジェプトゥー(ケニア・ロンドン五輪女子マラソン銀メダリスト)から7分近く遅れての11位に留まる。再起を期して、2014年1月26日の大阪国際女子マラソンへ2年ぶりに出場。15Km地点までは先頭争いに加わったが、その後大幅にペースダウン、2時間58分台の64位(当初、のち63位に繰り上げ)と不本意な成績だった。
世界陸上北京大会まで
[編集]翌2015年1月25日、2年連続3回目となる大阪国際女子マラソンに出走。タチアナ・ガメラシュミルコに10Km付近で追いつくが、中間点近くの折り返し地点を過ぎたから徐々に遅れていき、30Km過ぎではエレナ・プロコプツカ(ラトビア)にもかわされる。結果2時間26分台の記録ながらも、日本人トップとなる3位(当初)に入り、2012年の同大会以来3年振りの好走を見せる[6]。しかし、同年12月に当初3連覇だったガメラシュミルコのドーピング違反による失格裁定により、優勝・プロコプツカ、2位・重友と順位がそれぞれ繰り上がった。
同年3月11日、8月に開催される世界陸上北京大会女子マラソン日本代表へ、日本陸上競技連盟からは大阪国際でレース前半からハイペースの外国招待選手らに積極的についていった内容を高く評価され、自身初の世界陸上選手権に選出される[7]。だが、横浜国際女子マラソンで優勝[注釈 1](2時間26分57秒)した田中智美とのゴールタイムはわずか18秒の差ながら、重友と最後の日本代表の座を争って落選したため、田中を指導する第一生命陸上部監督の山下佐知子を初め[8]、ほか増田明美・高橋尚子などからも大きな異議が上がった[9]。また千葉真子は今回の選考に関し「重友さんがかわいそう」「重友さんは心から『やった』という走りじゃなかった。田中さんは実力がある。今後のレースでギャフンと言わせて欲しい」と、両選手を気遣うコメントを述べている[10]。
2015年8月30日、世界陸上北京大会の女子マラソンに出場。33Km地点辺りまでは集団の先頭で引っ張る積極性も見せたが、その後優勝したマーレ・ディババ(エチオピア)らのロングスパートに対応できずに後退、メダル・入賞争いから脱落。結局日本女子では3番手の14位だった(伊藤舞が7位入賞し翌2016年・リオデジャネイロ五輪日本代表に内定。前田彩里は13位)[11]。
リオ五輪出場ならず
[編集]2016年1月31日、リオ五輪女子マラソン選考会を兼ねた第35回大阪国際女子マラソンに出場。4年前のロンドン五輪選考会時と同様、福士加代子との対決が注目される。しかし15Km過ぎに福士らのハイペースから徐々に離され、レース後半は大きく失速してしまう。結果、優勝した福士とは約8分差で2時間30分台の5位に終わり、2大会連続の五輪女子マラソン日本代表入りはならなかった[12][13]。
2016年12月23日の山陽女子ロードレース・ハーフマラソンの部に出走、6位ながらも1時間11分47秒のタイムでハーフの自己記録を47秒更新した(優勝は同天満屋所属の小原怜)[14]。
世界陸上ロンドン大会まで
[編集]2017年1月29日、4年連続5回目となる第36回大阪国際女子マラソンに出場。レース序盤はハイペースの先頭集団についたが、14Km過ぎで第2集団に下がって待機。一時は先頭集団とは20秒以上差が付くも、24Km以降からペースアップ。29Km地点で単独2位に順位を上げ、レース後半に入り先頭を走る堀江美里(ノーリツ)との徐々に差を詰めて、35.5Km地点辺りで堀江を逆転。その後は重友の独走となり、自身のマラソン記録更新はならなかったが、2時間24分台のタイムで同大会5年ぶり2度目の優勝を果たした[15]。大阪国際女子マラソンで2回優勝の日本選手は、渋井陽子・赤羽有紀子・福士加代子に続いて史上4人目となる。この好成績によって同年3月17日、2017年8月開催予定の世界陸上ロンドン大会女子マラソン日本代表入りへ、2大会連続2度目の選出となった[16]。
2017年8月6日、世界陸上ロンドン大会の女子マラソンに出場するも、20Km過ぎで優勝・メダル争いから脱落。その後も順位は上がらないまま、世界陸上は2大会続けて日本女子で最下位の27位に終わり、これが現役最後のマラソンとなった(清田真央が日本人トップで16位、安藤友香も17位と日本女子3選手共入賞は成らなかった[17][18])。
現役引退
[編集]2017年11月26日、10年連続11回目の出場となるクイーンズ駅伝in宮城(第37回全日本実業団女子駅伝)へ6区・アンカーで出走(21分36秒・区間5位、天満屋チーム総合6位)。結果的にこのレースが、重友自身現役最後のラストランと成った[19]。
同年12月19日、翌2018年3月末日をもって現役引退し、所属先の天満屋を退職することを表明[20]。2日後の12月21日、記者会見において重友は「此処で区切りを付けるのがベストだと判断しました。自分の中では納得しています」と笑みを浮かべながらコメントしていた[21]。引退後は、市民ランナー・学生などのランニング指導でも活動している[22]。
マラソン全成績
[編集]年月 | 大会 | 順位 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|
2011年4月 | ロンドンマラソン | 24位 | 2時間31分28秒 | 初マラソン・世界陸上大邱大会選考レース |
2012年1月 | 大阪国際女子マラソン | 優勝 | 2時間23分23秒 | マラソン初優勝・マラソン自己記録・ロンドン五輪選考レース |
2012年8月 | ロンドンオリンピック女子マラソン | 78位[注釈 2] | 2時間40分6秒 | 日本女子では最下位 |
2013年8月 | 北海道マラソン | 13位 | 2時間51分55秒 | |
2013年11月 | ニューヨークシティマラソン | 11位 | 2時間31分54秒 | 日本女子では首位 |
2014年1月 | 大阪国際女子マラソン | 63位[注釈 3] | 2時間58分45秒 | 2014年アジア競技大会選考レース |
2015年1月 | 大阪国際女子マラソン | 2位[注釈 3] | 2時間26分39秒 | 日本女子では首位・世界陸上北京大会選考レース |
2015年8月 | 世界陸上北京大会女子マラソン | 14位 | 2時間32分37秒 | 日本女子では最下位・リオデジャネイロ五輪選考レース |
2016年1月 | 大阪国際女子マラソン | 5位 | 2時間30分40秒 | リオデジャネイロ五輪選考レース |
2017年1月 | 大阪国際女子マラソン | 優勝 | 2時間24分21秒 | マラソン2度目の優勝・世界陸上ロンドン大会選考レース |
2017年8月 | 世界陸上ロンドン大会女子マラソン | 27位 | 2時間36分03秒 | 日本女子では最下位・現役最後のマラソン |
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “重友梨佐…好きな有名人は松ケン/略歴”. 日刊スポーツ (2012年1月29日). 2012年1月29日閲覧。
- ^ a b c d “有力選手紹介(4)重友梨佐 秘めた闘志、チームの歴史継ぐ 1/2”. 産経新聞 (2012年1月25日). 2012年1月29日閲覧。
- ^ “有力選手紹介(4)重友梨佐 秘めた闘志、チームの歴史継ぐ 2/2”. 産経新聞 (2012年1月25日). 2012年1月29日閲覧。
- ^ “日本勢、入賞逃す 優勝はゲラナ/マラソン”. 産経新聞 (2012年8月5日). 2012年10月22日閲覧。
- ^ ガメラ、大阪国際女子マラソン3連覇など抹消へ ドーピング違反で4年間出場停止(産経WEST)
- ^ “重友梨佐 日本勢最高3位”. デイリースポーツ (2015年1月25日). 2015年1月26日閲覧。
- ^ 世界陸上代表にダイハツの前田彩、天満屋の重友ら 8月に北京で開催 産経WEST、2015年3月11日記事
- ^ 世陸女子マラソン選考で波紋 唯一Vの田中落選日刊スポーツ、2015年3月12日記事
- ^ Qちゃんも「異議あり」女子マラソン代表選考 日刊スポーツ、2015年3月20日記事
- ^ 千葉真子さん「重友さんがかわいそう」…世界選手権マラソン代表選考に言及(サンスポ)2015年3月15日記事
- ^ 世界陸上北京大会 M・ディババが優勝!伊藤は7位でリオ内定 女子マラソン決勝(スポーツナビ)
- ^ まさかの失速…重友、涙の5位「ついていけなくなった」/マラソン(サンスポ)2016年2月1日記事
- ^ 重友梨佐15キロで脱落「力がなかったということ」(日刊スポーツ)2016年2月1日記事
- ^ 第35回山陽女子ロードレース大会 重友梨佐<自己新>天満屋女子陸上競技部 大会レポート(2016年12月)]
- ^ 陸上:第36回大阪国際女子マラソン 重友が5年ぶり優勝 世界陸上代表に大きく近づく(スポーツナビ・実況)2017年1月29日記事
- ^ 世界陸上マラソン日本代表が意気込み 重友「悔しい思いで終わらないように」(スポーツナビ・陸上)2017年3月20日記事
- ^ 世界陸上ロンドン大会:女子マラソン実況(スポーツナビ)
- ^ 重友、ロンドン五輪の雪辱果たせずも「本当に意味があること」/世界陸上(サンスポ)2017年8月7日記事
- ^ 『クイーンズ駅伝2017』全日本実業団女子駅伝・総合順位結果TBSテレビ 2017年11月26日
- ^ ロンドン五輪代表 重友引退へ 天満屋女子陸上部、21日会見(山陽新聞)2017年12月19日記事
- ^ マラソン重友引退「自分で納得」 ロンドン五輪代表(デイリースポーツ)2017年12月21日記事
- ^ 重友さんコーチに備前で陸上教室 20日から、小学4~6年対象(山陽新聞)2018年6月7日記事
外部リンク
[編集]- 重友梨佐 - 日本陸上競技連盟の選手名鑑
- 重友梨佐 - ワールドアスレティックスのプロフィール
- 女子陸上競技部のあゆみ(天満屋・企業情報)
- 松野明美、高橋尚子から田中智美へ。女子マラソン選考問題は終わらない。(Number web・2015年3月20日)