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貴妃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

貴妃(きひ)は、かつての中国における皇帝妃嬪封号の一つである。通例では皇帝の側室の中で、高位の者に与えられた。宮廷における地位の高さとしては、親王正室である親王妃に相当する。また、朝鮮半島やベトナムにおいても用いられた。

歴史

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の時代、貴妃は正式な封号ではなく、非公式な場で、高位の妃嬪の尊称として用いられた。

南北朝時代南朝宋孝武帝が、初めて正式に貴妃の封号を定め、位としては相国に相当するものだった。そして、貴嬪中国語版貴人とあわせて三夫人中国語版と称した[1]。後世ではこれに沿った制度が多い。

においては、貴妃は皇后に次ぐ封号だった。唐の初め、皇后の下に貴妃、淑妃徳妃中国語版を設け、これを四夫人と称し、位は正一品とした。玄宗開元年間には後宮の封号制度が改められ、先の四つの妃の代わりに恵妃麗妃華妃中国語版の三妃を設けた[2]。開元十二年(724年)に王皇后が廃され、玄宗は武氏を恵妃とし、そのほかに趙氏を麗妃中国語版劉氏を華妃中国語版とした。開元二十三年(735年)、皇甫徳儀中国語版が亡くなると、淑妃を追贈した[3]天宝年間には改めて楊氏を貴妃とした。

これ以降の唐の後宮における妃の封号は貴妃、淑妃、徳妃、賢妃となった。ただし、唐では代宗から懿宗まで長期間、徳宗が王淑妃(昭徳王皇后)を亡くなる直前に皇后とした以外は皇后を立てず、この四妃(貴妃、淑妃、德妃、賢妃)で後宮関連の職務(本来は皇后の職務)を行っていたので、実際上は正室であった。それでも、名分上は側室でしかなく、皇帝が代替わりした場合、新帝の母でなければ必ずしも皇太后とされるわけではなかったし、あるいは追諡で皇后とされるわけでもなく、皇帝の嫡母というわけでもなかった。例としては代宗の崔貴妃中国語版がある。

においては、宮中の皇妃の封号は多く、たとえば順妃寧妃などがあった。貴妃は最高の封号だった。明の中後期には皇貴妃の封号があったので、貴妃は最高位のひとつ下となった。

の後宮における品級は次の通り:皇后皇貴妃、貴妃、貴人常在中国語版答応中国語版官女子中国語版。貴妃は三番目に位置する封号だった。

歴代王朝での貴妃の一覧

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南朝

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  1. 宋孝武帝:宣貴妃殷氏(追贈)
  2. 宋明帝:陳妙登
  3. 斉武帝:范貴妃
  4. 陳宣帝:銭貴妃中国語版
  5. 陳后主:張麗華

北周

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  1. 北周宣帝:元楽尚尉遅熾繁

唐朝

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  1. 唐高祖:萬貴妃中国語版
  2. 唐太宗:韋貴妃
  3. 唐睿宗:豆盧貴妃中国語版崔貴妃中国語版
  4. 唐玄宗:董貴妃楊貴妃
  5. 唐代宗:独孤貴妃崔貴妃中国語版
  6. 唐宪宗:郭貴妃
  7. 唐穆宗:武貴妃中国語版(追贈)
  8. 唐敬宗:郭貴妃中国語版
  9. 唐懿宗:王貴妃中国語版楊貴妃中国語版(追贈)

五代十国

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  1. 後周太祖:張貴妃中国語版
  2. 前蜀高祖:張貴妃中国語版
  3. 前蜀后主:銭貴妃中国語版
  4. 南漢后主:李貴妃中国語版
  5. 后蜀高祖:李貴妃中国語版

宋朝

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  1. 宋太宗:臧貴妃中国語版(追尊)
  2. 宋真宗:昭静貴妃(尊封)、杜瓊真(追尊)
  3. 宋仁宗:張貴妃昭節貴妃(尊封)、昭淑貴妃(尊封)、昭懿貴妃(追尊)
  4. 宋神宗:刑貴妃(尊封)
  5. 宋哲宗:慕容貴妃(尊封)
  6. 宋徽宗:鄭貴妃大王貴妃懿粛貴妃小王貴妃喬貴妃劉貴妃劉貴妃
  7. 宋高宗:呉貴妃劉貴妃張貴妃
  8. 宋孝宗:謝貴妃蔡貴妃中国語版
  9. 宋寧宗:楊貴妃
  10. 宋光宗:黄貴妃張貴妃中国語版
  11. 宋理宗:謝道清中国語版賈貴妃中国語版閻貴妃中国語版

遼朝

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  1. 景宗:蕭綽
  2. 聖宗:蕭貴妃(元皇后)、蕭貴妃耶律燕哥中国語版の母)
  3. 興宗:蕭貴妃中国語版

金朝

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  1. 金太祖:蕭貴妃中国語版
  2. 金熙宗:裴满貴妃
  3. 海陵王:大貴妃唐括定哥
  4. 金世宗:李貴妃中国語版

明朝

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  1. 明太祖:成穆貴妃
  2. 明成祖:昭献貴妃昭懿貴妃
  3. 明仁宗:郭貴妃
  4. 明宣宗:孫貴妃何貴妃中国語版(追尊)
  5. 明英宗:周貴妃
  6. 明宪宗:万貴妃邵貴妃
  7. 明世宗:沈貴妃文貴妃中国語版閻貴妃
  8. 明穆宗:李貴妃
  9. 明神宗:鄭貴妃
  10. 明思宗:袁貴妃田貴妃
  11. 弘光帝:金貴妃

清朝

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  1. 順治帝懿靖大貴妃(ナムジョン)
  2. 康熙帝貴妃佟佳氏貴妃佟佳氏温僖貴妃皇考貴妃瓜尔佳氏
  3. 雍正帝貴妃年氏熹貴妃鈕祜禄氏皇考裕貴妃耿氏(尊封)
  4. 乾隆帝貴妃高氏嫻貴妃輝発那拉氏令貴妃魏氏純貴妃蘇氏慶貴妃陸氏嘉貴妃金氏婉貴妃陳氏(尊封)、穎貴妃巴林氏忻貴妃戴佳氏(追封)、愉貴妃珂里叶特氏(追封)、循貴妃伊爾根覚羅氏(追封)
  5. 嘉慶帝貴妃鈕祜禄氏諴貴妃劉佳氏皇考如貴妃鈕祜禄氏
  6. 道光帝全貴妃鈕祜禄氏静貴妃博尔济吉特氏琳貴妃烏雅氏彤貴妃舒穆禄氏佳貴妃郭佳氏(尊封)、成貴妃鈕祜禄氏(尊封)
  7. 咸豊帝貞貴妃鈕祜禄氏懿貴妃叶赫那拉氏祺貴妃佟佳氏(尊封)、玫貴妃(尊封)、婉貴妃(尊封)
  8. 同治帝瑨貴妃珣貴妃瑜貴妃
  9. 光緒帝瑾貴妃(尊封)、珍貴妃(追封)
  10. 溥儀明賢貴妃(追贈)

朝鮮半島

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高麗の後宮制度は当初は定まっていなかった。第8代国王の顕宗の時に貴妃や淑妃の号が用いられるようになり、妃嬪の一人、李子林は王姓と貴妃の号を与えられ、元質貴妃王氏朝鮮語版となった。その後、第11代国王の文宗の時に制度が整えられ、貴妃、淑妃、徳妃、賢妃は正一品となった[4]

関連項目

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脚注

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  1. ^ 南史』巻十一・紀伝第一「及孝武孝建三年,省夫人,置貴妃,位比相国。进貴嬪丞相貴人三司,以為三夫人」
  2. ^ 新唐書』巻四十七・志第三十七・百官二「惠妃、麗妃、華妃,以代三夫人」 :s:zh:新唐書/卷047#內官
  3. ^ 唐故德仪赠淑妃皇甫氏神道碑”. 中国盲人数字图书馆 (2008年11月25日). 2012年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年11月23日閲覧。
  4. ^ 高麗史』巻七十七・志第三十一・内職「國初未有定制,后妃而下,以某院、某宮夫人爲號。顯宗時,有尙宮、尙寢、尙食、尙針之職,又有貴妃、淑妃等號。靖宗以後,或稱院主、院妃,或稱宮主。文宗定官制,貴妃、淑妃、德妃、賢妃並正一品。」








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