創世記
『創世記』はヘブライ語では冒頭の言葉を取ってבראשית(ベレシート、bereshit)と呼ばれており、これは「はじめに」を意味する。また、ギリシア語の七十人訳では、2章4節[注 1]からとって「γένεσις(ゲネシス)」と呼ばれており[4]。「起源、誕生、創生、原因、開始、始まり、根源」の意である[5]。
主な内容
編集内容は、「天地創造と原初の人類」、「イスラエルの太祖たち」、「ヨセフ物語」の大きく3つに分けることができる。
ヘブライ語聖書における創世記の成立・編集について
編集神話風の原初史、父祖の物語、ヨセフ物語の三つの部分から成るが、これらはもともとは別の物語であり、成立過程の異なった物語を、連続する物語としても読めるように編集したものである[6]。創世記を含むモーセ五書が現在の形に編集された時期は、紀元前550年前後のバビロニア捕囚期とされる[7]。
原初史に見られる大きな特徴としては、叙述の重複として、同じことについて2度、それも違ったことが語られている箇所が多くみられることである。このことに言及した解説では、その例として、ノアの箱舟に乗り込む命令が2回なされるところ[8]では、動物の数を種類ごとに分けて入れよという命令と、種類の区別なく入れよという命令が2回なされていることがあげられている[9][10][11]。これは、現在の形に編集するときに、内容の似た別個の二つの話があり、それらを組み合わせてひとつの話に編集したためであるとされている[9]。また、神の呼称にもヤハウェとエロヒム(神)の二つがあり、それらが理由もなく交替して現れてくることも、内容の似た別個の二つの話を組み合わせてひとつの話に編集したためであるとされている[12]。ヤハウェの呼称を用いる文書については、古いものでは前10世紀に成立したと考えられている[13][注 2]が、異論もある(詳しくは文書仮説を参照)。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 「創世記」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』 。コトバンクより2022年2月2日閲覧。
- ^ “口語訳聖書『創世記』2章4節”. Wikisource. 2017年12月12日閲覧。
- ^ “Γένεσις, Κεφάλαιον β'(七十人訳聖書『創世記』2章)”. Wikisource. 2017年12月12日閲覧。
- ^ Carr 2000, p. 491.
- ^ “Γένεσις - LSJ The Online Liddell-Scott-Jones Greek English Lexicon” (英語). Thesaurus Linguae Graecae. 2017年12月12日閲覧。
- ^ 岩波書店1997年旧約聖書〈Ⅰ〉創世記(月本昭夫解説P181)
- ^ 伝承が文書の形にまとめられるきっかけとなったのは、前586年のエルサレム神殿の破壊と、バビロン捕囚に伴う異教の地への強制移住であったとされている。 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(レビ記の解説P425、山我)
- ^ 創世記7:1と6:18
- ^ a b 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(出エジプト記解説P396、木幡)
- ^ 創世記7:2と6:19
- ^ 冒頭部分においても天と地、昼と夜も2回創造されている。創世記1
- ^ たとえば創世記6:5と創世記6:9等がある。
- ^ 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(出エジプト記解説P402木幡)
参考文献
編集- Carr, David M. (2000). Freedman, David Noel; Myers, Allen C.. eds. Eerdmans Dictionary of the Bible. Amsterdam University Press. ISBN 9780567372871
- 木幡藤子 ・山我哲雄翻訳 岩波書店 2000年『旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記』(出エジプト記の解説、木幡藤子 レビ記の解説 山我哲雄)
- 月本昭男訳 岩波書店 1997年『旧約聖書〈Ⅰ〉創世記』(創世記の解説月本昭男)
- 岩波キリスト教辞典 岩波書店2002年 編集者 大貫隆、名取四郎、宮本久雄、百瀬文晃 執筆者 青木茂 他多数