4ストローク機関
4ストローク機関(フォーストロークきかん、Four-stroke cycle engine)は、レシプロ型内燃機関の一種である。4ストローク/1サイクルエンジンのこと。
略して4ストともいい、エンジンの動作周期の間に4つの行程を経ることからこのように呼ばれる。また、ドイツの発明者、ニコラス・オットーを採ってオットーサイクルと呼ばれることもある。4ストローク/1サイクルエンジンのうち分母を略すか分子を略すか一定しておらず4サイクル機関や4行程機関とも呼ばれる。
概要
ストローク(行程)とはピストンの往復運動の片道のことである。ステージとは内燃機関の動作段階のことである。1サイクルは内燃機関の全動作段階の1周期のことである。4ストローク機関は1行程を1ステージに対応させる容積型内燃機関であり、4行程で1サイクルを構成する(すなわちクランク軸の2回転で1サイクルを構成する)内燃機関である。 現行の二輪車や四輪車はほとんどこの方式である。一定気圧の4サイクルエンジンの高出力化は高回転化で達成されることが多く、多気筒化やバルブ数を増やすことは、その手段の一つである。 それは、多気筒化やバルブ数を増やすことによって、各可動部品を小さくして、質量を少なくすることが可能なため、高速回転エンジンを設計することが出来るからである。 しかしながら、バルブ数は増やせばよいというものでもなく、総合効率はかえって低下する。現実的には5バルブ以上に増やしても吸気効率も上がらず、却って部品点数が増えるために構造が複雑になり、摩擦損失も多くなり、コストが上がるなどの弊害が多くなる。また、回転数を高くすると騒音や振動が増えて寿命が短くなるために、市販車の場合では、車種にもよるが、2輪車では最高でも18000rpm程度、4輪車では最高でも7000~8000rpm程度の回転数である。
行程
一般的なガソリンエンジンの4つのステージは以下の通り。 この間に動力伝達軸であるクランクシャフトは2回転する。
- 吸収行程: ピストンが下がり混合気(燃料を含んだ空気)をシリンダ内に吸い込む行程。
- 圧縮行程: ピストンが上死点まで上がり混合気を圧縮する行程。
- 爆発行程: 着火された混合気の燃焼、膨張によりピストンが下死点まで押し下げられる行程。
- 排気行程: 慣性によりピストンが上がり燃焼ガスをシリンダ外に押し出す行程。
ディーゼルエンジンの場合は内容が異なる。
- 吸入行程: ピストンが下がり、空気のみをシリンダ内に吸い込む行程。
- 圧縮行程: ピストンが上死点まで上がり空気のみを圧縮する行程。
- 爆発行程: 空気が高温になったところで、副室式では予燃焼室または過流室内に、直噴式ではピストン頂部の燃焼室内に燃料が噴射され燃焼が始まり、空気の膨張力によりピストンを下死点まで押し下げる行程。
- 排気行程: 慣性によりピストンが上がり、燃焼ガスをシリンダ外に押し出す行程。
ガソリンエンジンは点火プラグのスパークにより、ピストンが押し下げられるより早く燃焼が終了するため、燃焼前後で見るとシリンダー内の空気は等積変化(等容変化)で圧力が上昇するが、コモンレール式などのマルチ噴射ディーゼルエンジンでは3-5回程度に分散して燃料を噴射するためにシリンダー内の空気はほぼ等圧変化をする。
工夫
本田技研工業(ホンダ)は、より高い出力を出すために点火プラグをシリンダーあたり2本、バルブをシリンダーあたり8本搭載した楕円ピストンエンジン(オーバルピストンエンジン)を2輪車に用いた(NRシリーズ)。これは8気筒の隣接する機構を一体化したような4気筒エンジンであり、4気筒で8気筒並みの性能を求めるためのものであった。
二輪、四輪自動車の一部や航空機用のエンジンの多くは点火プラグをシリンダーあたり2本持つ。航空機用エンジンの場合は出力を高めるという目的より、「トラブルにより片方の点火プラグが使えなくなっても、もう片方の点火プラグでエンジンを回して飛行し続けられるように」という安全面の目的のためである。
2ストローク機関との比較
長所
- 未燃焼ガスなどの有害物質が少なく、触媒もつけられる。
- 小排気量ガソリンエンジンでは2ストローク機関よりも燃費が良い。
- エンジン音の静粛性が2ストローク機関より高い。
欠点
- 同排気量で比較すると出力が低い(同消費燃料での比較ではない)(同一周期に2倍の回転数をかけるため当たり前)。
- バルブなどの部品点数が増えるために重くなり、コストもかかる。
- 爆発間隔が長くなるため、スロットル操作時の反応が若干遅くなる。
誤解
- 爆発行程がクランク2回転に対し1回であることから、単気筒では使用できない、または実用的ではないという誤解が生じ、一時期、教育向けの図鑑にもそう記載されていた事があった。