ガストロパブ
ガストロパブ (gastropub)、ないし、ガストロラウンジ (gastrolounge) は、ビールや食べ物を供するバーとレストランを兼ねた飲食店を指す表現[1]。イギリスのパブ文化の中で20世紀末に出現し、21世紀に入ってから普及が進んだ業態であり、世界各地に「ガストロパブ」を名乗る飲食店はあるもののイギリスが本場と見なされる[2]。
語源
[編集]「ガストロパブ」という用語は、「ガストロノミー (gastronomy)」と「パブ (pub)」を組み合わせたかばん語(ポーマントー)であり、20世紀末のイギリスに起源が求められる。
伝統的なパブの食事
[編集]イギリスのパブは、元々酒を飲む施設であり、食べ物の提供はあまり重視されていなかった[3]。パブで食事を提供することがあっても、通常はプラウマンズランチのように、加熱調理を要しない簡単な食事というのが一般的であった[4]。イングランド南西部、とりわけロンドンでは、近年に至るまで、夕方から閉店にかけての時間帯には、ザルガイ、ツブ貝、イガイ、その他の貝類を調理して売ることがよく行われていた。貝類の移動販売の屋台がパブの近くに店を出すこともよくあり、ロンドンのイースト・エンドでは、今もこうした光景が見られる。
「パブ・グラブ (Pub grub)[5]」と称される「パブめし」には、イギリス特有の食事であるステーキ・アンド・エール・パイ(ミートパイの一種)、シェパーズパイ、フィッシュ・アンド・チップス、バンガーズ・アンド・マッシュ (bangers and mash)、サンデーロースト、プラウマンズランチ、パスティなども含まれる。加えて、ハンバーガー、チップス(フライドポテト)、ラザニア、チリコンカーンが供されることもよくある[6][7]。
ガストロパブの出現と普及
[編集]「ガストロパブ」という言葉が生まれたのは、デイヴィッド・エア (David Eyre) とマイク・ベルベン (Mike Belben) がロンドンのクラーケンウェル (Clerkenwell) にあるバプ「ジ・イーグル (The Eagle)」の経営を引き継いだ[8]、1991年とされる[要出典]。パブの中にレストランを入れるというコンセプトは、伝統的なパブの性格を消し去ってしまう恐れがある、としばしば批判もされてきたが[9]、結果的にパブ文化とイギリスの外食の両方を活性化させることとなった[10]。
ガストロパブの増加は、テレビの料理番組人気や、モダン・ブリティッシュと称される創作料理の普及などとともに、21世紀初頭に急速に進行したイギリス人の「食への目覚め」の一環と理解されている[11]。
英単語としての「gastropub」は、2012年8月に刊行された『メリアム=ウェブスター大学辞典 (Merriam Webster's Collegiate Dictionary)』2012年版から、この辞典に収録されるようになった[12]。
ロンドンには、ミシュランガイドの星を獲得したガストロパブも存在する[2]。
脚注
[編集]- ^ Farley, David (2009年5月24日). “New York Develops a Taste for Gastropubs”. The Washington Post. 2014年3月30日閲覧。
- ^ a b “身も心も温まる本場英国のガストロ・パブへ”. 英国ニュースダイジェスト (2011年1月27日). 2014年3月30日閲覧。
- ^ “Pub Food”. Lookupapub.co.uk. 2009年6月26日閲覧。
- ^ “Ploughman's Lunch - Icons of England”. Icons.org.uk (2007年7月16日). 2009年6月26日閲覧。
- ^ 英語の grub は、本来は昆虫の幼生などを指すが、「食べ物」という俗語の意味がある。
- ^ Better Pub Grub
- ^ Mirror.co.uk
- ^ Norrington-Davies, Tom (2005年11月24日). “Is the gastropub making a meal of it?”. The Daily Telegraph (London) 2008年7月10日閲覧。
- ^ Norrington-Davies, Tom (2005年11月24日). “Is the gastropub making a meal of it? - Telegraph”. London: telegraph.co.uk 2009年7月21日閲覧。
- ^ “American gastropub: what's in a name?”. Art Culinaire (via findarticles.com). (Spring 2007). オリジナルの2008年5月13日時点におけるアーカイブ。 2008年7月23日閲覧。
- ^ 鶴原徹也 (2010年4月2日). “[緩話急題]グルメブーム 英国「食の革命」なるか”. 読売新聞・東京朝刊: p. 10 - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ “A Sample of New Dictionary Words for 2012” 2012年8月16日閲覧。