コンテンツにスキップ

バス勲章

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バス勲章
The Most Honourable Military Order of the Bath
ナイト(デイム)・グランド・クロス星章(右:軍人用、左:文民用)
連合王国君主による栄典
種別 騎士団勲章
標語 TRIA JUNCTA IN UNO ("three joined in one")
Ich dien (軍事部門のみ)
創設者 ジョージ1世
資格 君主の意向
対象 イギリス人:重要な役職を務めた軍人、政治家、官僚
外国人:政府首脳級(大統領・首相 等)を務めた人物
主権者 チャールズ3世
グレートマスター 空位
地位
  • ナイト(デイム)・グランド・クロス (GCB)
  • ナイト(デイム)・コマンダー (KCB/DCB)
  • コンパニオン (CB)
歴史・統計
創立 1725年5月18日
人数
  • GCB:120名
  • KCB/DCB:295名
  • CB:1,455名
階位
上位席 聖パトリック勲章
下位席 インドの星勲章
略綬

バス勲章英語:Order of the Bath)は、イギリスの騎士団勲章(Order)のひとつ。正式タイトルは「The Most Honourable Military Order of the Bath(最も名誉あるバス軍事勲章)」。1725年に現在のような勲章となった。綬の色から「レッドリボン」とも呼ばれている。

ヨーロッパの“Order”は中世の騎士団に由来、あるいはその制度に倣った栄典制度であり、騎士団へ入団することが栄誉とされていた。やがて騎士団の団員証である勲章も意味するようになり、その授与が栄典と見なされるようになった。このような勲章は他の種類の勲章(decoration等)と区別するために“騎士団勲章” とも表記される[1][2]"Order of the Bath" の場合は、休眠状態だった世俗騎士団の名称を受継いだ勲章騎士団である[3]

構成

[編集]

現在の階級は3等級となっており、1等は男性がナイト・グランド・クロス (Knight Grand Cross)で女性はデーム・グランド・クロス (Dame Grand Cross)、2等は男性がナイト・コマンダー (Knight Commander)で女性はデーム・コマンダー (Dame Commander)、3等はコンパニオン (Companion) である。上位2等級の受章者にはナイトの爵位が与えられ、ナイト・グランド・クロス及びデーム・グランド・クロスにはGCB、ナイト・コマンダーはKCB、デーム・コマンダーはDCB、コンパニオンはCBのポスト・ノミナル・レターズの使用が許される。騎士団の定員は、ナイト・グランド・クロス/デーム・グランド・クロスが120名、ナイト・コマンダー/デーム・コマンダーは295名、コンパニオンは1,455名と定められている[4]

軍人用は高級将校、文民用は高級官僚が主な授与対象であり、重要な役職を務めた功績に対して与えられる[5]。外国人に対しては、共和国の大統領等政府首脳級の政治家にナイト・グランド・クロスが贈られる[6]

日本人では伊藤博文が最初に受章し、その後は乃木希典1912年)、桂太郎竹下勇らが受章している[6]

役職者

[編集]

グレイトマスター

[編集]

グレイトマスター(Greatmaster)主権者イギリス国王)に次ぐ地位をもつ。今までに9人が任命されており、現在はウィリアム皇太子が務める。

肖像 氏名 在任期間 出典
第2代モンタギュー公爵
ジョン・モンタギュー
1725年 - 1749年 [7][8]
空位 1749年 - 1767年
ヨーク=オールバニ公爵
フレデリック王子
1767年 - 1827年
クラレンス=セント・アンドルーズ公爵
ウィリアム王子

(のち国王ウィリアム4世
1827年 - 1830年
空位 1830年 - 1837年
サセックス公爵
オーガスタス=フレデリック王子
1837年 - 1843年 [9][10]
イギリス王配
アルバート公子
1843年 - 1861年 [11]
空位 1861年 - 1897年
プリンス・オブ・ウェールズ
アルバート・エドワード皇太子

(のち国王エドワード7世
1897年 - 1901年 [12]
コノート=ストラサーン公爵
アーサー王子
1901年 - 1942年 [13]
グロスター公爵
ヘンリー王子
1942年 - 1974年 [14]
プリンス・オブ・ウェールズ
チャールズ皇太子

(のち国王チャールズ3世
1974年 - 2022年 [15]
空位 2022年 - 2024年
プリンス・オブ・ウェールズ
ウィリアム皇太子
2024年 - [16]


役職者

[編集]

現在の役職者

  1. (司祭) - デイヴィッド・ホイル英語版MBEウェストミンスター主席司祭英語版
  2. (レジスター)- イアン・ヘンダーソン英語版海軍少将[17]、セクレタリーを兼務。
  3. (主席紋章官)- サー・ステファン・ダルトン英語版空軍元帥[18]
  4. (アッシャー)- ジェイムズ・ゴードン英語版陸軍少将[19]。(赤杖官英語版
  5. (系譜担当官)- デイヴィッド・ホワイト

歴史

[編集]
ウェストミンスター寺院まで行進するバス騎士団員(1749年

バス騎士団は1399年に行われたヘンリー4世の戴冠式に際して創設された[3]。名称はかつて騎士の叙任式に清めの入浴(bath=風呂)を行ったことに由来する[4]。当時は団員証(勲章)が制定されておらず、ナイトの称号のみが与えられる栄典だった[3]。ただし、チャールズ2世の戴冠式(1661年)の際に75個の徽章が作成されたとされている[4]

この戴冠式の後、騎士団員への叙任が行われなくなり、実体のない騎士団となっていたが、1725年5月にバス騎士団が再創設された[20]。この際に、騎士団付き系譜学者(ジョン・アンスティス)も任命されている。

当初はナイト・コンパニオン(KB)の単一等級であった。受章者は軍人が圧倒的に多かったが、1815年に3等級とされると共に文民用と軍人用に分けられて、それらのデザインも異なるものとなった。制度改正時にナイト・コンパニオンであった者はナイト・グランド・クロスへ叙された[21]。これにより、文官にも多少の叙勲枠が確保された。このように、軍人や高級官僚用の勲章であるため、1971年まで女王以外の女性に授与されることはなかった[4][22][23]

現在の騎士団員

[編集]

主権者(Sovereign)

[編集]
肖像 紋章 氏名
国王

チャールズ3世

(1948年 - )

(2022年即位 - )

騎士団員(Knights and Ladies Companion)

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ 小川 P 147
  2. ^ 毎日新聞社
  3. ^ a b c 君塚 P 253
  4. ^ a b c d 英王室公式サイト
  5. ^ 小川 第4章
  6. ^ a b 君塚 P 255
  7. ^ "No. 6376". The London Gazette (英語). 25 May 1725. p. 1.
  8. ^ Nicolas, Appendix p. lxx gives the first four Great Masters, although he considers the latter three to have only been acting Great Masters
  9. ^ "No. 19570". The London Gazette (英語). 19 December 1837. p. 3309.
  10. ^ "No. 19592". The London Gazette (英語). 23 February 1838. p. 407.
  11. ^ "No. 20737". The London Gazette (英語). 25 May 1847. pp. 1947–1957.
  12. ^ The Times, 22 June 1897, p. 10.
  13. ^ "No. 27289". The London Gazette (英語). 26 February 1901. p. 1414.
  14. ^ The Times, 25 February 1942, p. 7.
  15. ^ "No. 46428". The London Gazette (英語). 10 December 1974. p. 12559.
  16. ^ Milss, Rhiannon (23 April 2024). “King recognises Queen and Prince William in honours list and creates new role for Kate, Princess of Wales”. Sky News. https://news.sky.com/story/king-recognises-queen-and-prince-william-in-honours-list-and-creates-new-role-for-kate-princess-of-wales-13121607 23 April 2024閲覧。 
  17. ^ "No. 58010". The London Gazette (英語). 13 June 2006. p. 8073.
  18. ^ Central Chancery of the Orders of Knighthood”. TheGazette.co.uk. The London Gazette, HM Government (7 December 2018). 22 December 2018閲覧。
  19. ^ Central Chancery of the Orders of Knighthood”. TheGazette.co.uk. The London Gazette, HM Government (7 December 2018). 22 December 2018閲覧。
  20. ^ Ailes, Adrian (3 January 2008) [2004]. "Anstis, John". Oxford Dictionary of National Biography (英語) (online ed.). Oxford University Press. doi:10.1093/ref:odnb/585 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入。)
  21. ^ "No. 16972". The London Gazette (英語). 4 January 1815. pp. 17–18. 2013年2月14日閲覧
  22. ^ 君塚 P 253-258
  23. ^ 小川 P 92

参考資料

[編集]

書籍等

[編集]
  • 小川賢治『勲章の社会学』晃洋書房、2009年3月。ISBN 978-4-7710-2039-9 
  • 君塚直隆『女王陛下のブルーリボン-ガーター勲章とイギリス外交-』NTT出版、2004年。ISBN 4757140738 
  • 総理府賞勲局監修『勲章』毎日新聞社、1976年(昭和51年)。 
  • London Gazette: no. 56878. 14 March 2003. Supplement No.1.

外部リンク

[編集]

関連項目

[編集]
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy