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報酬系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
主な報酬の例[1]
Girl drinking water

Runner's high
運動
Couple kissing
セックス

Selection of foods
食品
Mother and newborn infant
育児

報酬系(ほうしゅうけい、: reward system)とは、インセンティブ顕現性(たとえば報酬に対してのモチベーション欲望渇愛)、連合学習(おもに正の強化古典的条件づけ)、ポジティブ感情、とりわけ喜びの中核(幸福感、エクスタシー)を司る神経回路のグループである[1][9]。報酬(Reward)とは、魅力的でモチベーショナルな行動(アプローチ行動)を誘発する刺激であり、欲求行動、完遂行動を誘発するものである[1]。これらの文脈において報酬刺激(単に報酬とよばれる)とは、「それに対して私たちがアプローチし消費させるポテンシャルを秘めるもの(刺激、目的、出来事、活動、状況など)が報酬である」と神経科学分野では記される[1]オペラント条件付けにおいては、報酬刺激とは正の強化子であり[1]、また一方でそのも真であり、正の強化子は報酬である[1]

の様々な領域が報酬系に関与しているが、その中心的役割を担っているのは中脳腹側被蓋野線条体側坐核である。しかし中脳の腹側被蓋野の神経細胞は、様々な脳領野から軸索入力を受けており[10][11]、その回路の実態は非常に複雑である。

ほとんどの動物種の生存は、有益な刺激との接触を最大にし、かつ有害な刺激との接触を最小にすることに起因する。これら報酬を認知することで、その動物は連合的学習を作り、アプローチと正常な行動が誘発され、肯定的感情が促進されるため、生存および生殖の可能性を高める役割を果たしている[1]。報酬とは、動物の適応能力向上を目的として進化したメカニズムである[12]

定義

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報酬とは、誘因行動(引き寄せられる、それに近づきたいと思う)を引きおこす刺激の総称である。例えば、お腹がすいている人にとって、おいしい食べ物は報酬である。しかしながら、お腹がいっぱいな人にとって食べ物は報酬ではない。むしろ、不快感を与える。また、ある種の美人や美女の魅惑的な顔は報酬となるが、人それぞれ好みがバラバラである。つまり報酬であるか否かは、脳の状態に依存して、主観的な快体験を起こすかどうかということで決まる。客観的にそれが報酬であるかどうかを測定するには、誘因行動を引き起こすかどうかを測定するのが一般的な方法である。動物の場合はその物質に引き寄せられるような行動をとっているかどうかを測定する。

報酬の主な機能は3つである。

  1. 連合学習(すなわち古典的条件付けオペラント強化)を生み出す[1]
  2. 意思決定に影響を及ぼし、アプローチ行動を誘発する(報酬刺激に動機付けに関する際立ちを割り当てることによって)[1]
  3. 肯定的感情、特に喜びを誘発する[1]

報酬系を担う脳の回路

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報酬系は脳全体に分布しているが、その中で重要な役割を担っているのが、中脳の腹側被蓋野のドーパミン神経(TH陽性神経細胞またはDAT陽性神経細胞)である。

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j “Neuronal reward and decision signals: from theories to data”. Physiological Reviews 95 (3): 853–951. (2015). doi:10.1152/physrev.00023.2014. PMC 4491543. PMID 26109341. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4491543/. 
  2. ^ “Chapter 15: Reinforcement and Addictive Disorders”. Molecular Neuropharmacology: A Foundation for Clinical Neuroscience (2nd ed.). New York: McGraw-Hill Medical. (2009). pp. 364–375. ISBN 9780071481274 
  3. ^ Nestler EJ (December 2013). “Cellular basis of memory for addiction”. Dialogues Clin. Neurosci. 15 (4): 431–443. PMC 3898681. PMID 24459410. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3898681/. 
  4. ^ Glossary of Terms”. Mount Sinai School of Medicine. Department of Neuroscience. 9 February 2015閲覧。
  5. ^ “Neurobiologic Advances from the Brain Disease Model of Addiction”. N. Engl. J. Med. 374 (4): 363–371. (January 2016). doi:10.1056/NEJMra1511480. PMID 26816013. 
  6. ^ 中村春香、成田健一「嗜癖とは何か-その現代的意義を歴史的経緯から探る」『人文論究』第60巻第4号、2011年2月、37-54頁、NAID 120003802584 
  7. ^ 世界保健機関 (1957). WHO Expert Committee on Addiction-Producing Drugs - Seventh Report / WHO Technical Report Series 116 (pdf) (Report). World Health Organization. pp. 9–10.
  8. ^ 世界保健機関 (1994) (pdf). Lexicon of alchol and drug term. World Health Organization. pp. 6. ISBN 92-4-154468-6. http://whqlibdoc.who.int/publications/9241544686.pdf  (HTML版 introductionが省略されている
  9. ^ “Pleasure systems in the brain”. Neuron 86 (3): 646–664. (May 2015). doi:10.1016/j.neuron.2015.02.018. PMC 4425246. PMID 25950633. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4425246/. 
  10. ^ Uchida Naoshige et al. Whole-brain mapping of direct inputs to midbrain dopamine neurons Neuron 2012
  11. ^ Liqun Luo et al. Circuit Architecture of VTA Dopamine Neurons Revealed by Systematic Input-Output Mapping (Cell 2015)
  12. ^ Kolb B, Whishaw IQ (2001). An Introduction to Brain and Behavior (1st ed.). New York: Worth. pp. 438–441. ISBN 9780716751694 

関連項目

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外部リンク

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