コンテンツにスキップ

時空の果てで

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
時空の果てで
Hell Bent
ドクター・フー』のエピソード
ペイントされたターディス
話数シーズン9
第12話
監督レイチェル・タラレイ
脚本スティーヴン・モファット
制作ニッキー・ウィルソン英語版
音楽マレイ・ゴールド
初放送日イギリスの旗 2015年12月5日
エピソード前次回
← 前回
影に捕らわれて
次回 →
リヴァーソングの夫
ドクター・フーのエピソード一覧

時空の果てで」(じくうのはてで、原題: "Hell Bent")は、イギリスSFドラマドクター・フー』第9シリーズ第12話にして最終話。2015年12月5日に BBC One で初放送された。脚本はスティーヴン・モファット、監督はレイチェル・タラレイが務めた。

本作では、異星人のタイムトラベラー12代目ドクター(演:ピーター・カパルディ)が自らの種族タイムロードによる監獄を脱出して惑星ガリフレイに到達し、新たな大統領に就任する。彼はタイムロードの間で予言されている、ガリフレイの廃墟に立つとされるハイブリッドの知識を使い、コンパニオンのクララ・オズワルド(演:ジェナ・ルイーズ・コールマン)の命を救おうと奔走する。その過程で宇宙の終焉に辿り着いた彼は、不老不死の存在として生き延びていたアシルダ英語版(演:メイジー・ウィリアムズ)と遭遇し、自分自身とクララが2人で1人のハイブリッドと化したことを指摘される。

連続性

[編集]

ガリフレイ脱出のためにクララとドクターが盗んだターディスの内装は、An Unearthly Child(1963年)で登場した最初のターディスの内装がモデルになっている[1]。また、ラシロンは「時の終わり」(2009年 - 2010年)以来の再登場を果たす[2]。クララは極性を反転させたというフレーズを口にしており、これは3代目ドクターをはじめとするドクターが頻繁に口にしていたものである[2]。ガリフレイに到達したドクターが訪れた納屋は、彼が幼少期を過ごし(「聞いて」)、後に終末兵器モメントを起動しようとした(「ドクターの日」)場所である[1]

ハイブリッドがドクターとクララの2人のことであると明言される前に、アシルダはドクターが半人間半タイムロードのハイブリッドではないかと仮定している。8代目ドクターは1996年のテレビ映画で同様の主張をしていた[1]。アシルダがターディスのドアを4回ノックした際、ドクターは「いつも4回だ」と指摘している。これは10代目ドクターの死について「彼は4回ノックする」と予言されていたことを反映している[2]。ドクターがクララの記憶を消去することを決めた際、以前にもテレパシーを使って同じことをしたと彼は告げている。これは10代目ドクターが「旅の終わり」(2008年)でドナ・ノーブルの旅の記憶を消したことを指している[2]。最終的にクララの策略でドクターがクララの記憶を失うことになるが、その後彼が訪れたクララのレストランは「ドクターからの招待状」(2011年)で11代目ドクターが訪れたレストランと同じ内装をしている。そのエピソードでは当時のコンパニオンのエイミー・ポンドローリー・ウィリアムズも店を訪れており、12代目ドクターはその2人にも言及している[3]

魔術師の弟子」でミッシーはクロイスター戦争について、ドクターが月と大統領の妻を盗んだとして言及していた。彼は本作でその言及について訂正を入れており、大統領の妻ではなく娘だったこと、そして月は盗んだのではなく失ったのだと主張している[2]

ドクターがレストランに向かって歩く場面では、フォクシス英語版版の「ドント・ストップ・ミー・ナウ」が流れている。この歌は「オリエント急行のミイラ」でも使用された[2]。店内でドクターがエレクトリック・ギターで演奏した曲はクララのテーマ曲のアレンジである。この曲はマレイ・ゴールドが作曲し、クララ役のコールマンが初めて『ドクター・フー』に出演した「ダーレク収容所」(2012年)で最初に流れた[4]。また、12代目ドクターは "Bad Wolf" のライトモティーフも演奏している[4][5]

製作

[編集]

「時空の果てで」の台本の読み合わせは2015年8月4日に行われ、撮影は2015年8月10日に開始された。ネバダ州ガリフレイでの屋外のシーンはスペインカナリア諸島フエルテベントゥラ島で8月下旬に3日をかけて撮影された[2]

配役

[編集]

メイジー・ウィリアムズは「死んだ少女」・「生き続けた少女」・「カラスに立ち向かえ」でアシルダ役、ケン・ボーンズ英語版は「ドクターの日」で将軍役、クレア・ヒギンス英語版 は「ドクター前夜」と「魔術師の弟子」でオヒラ役を演じており、それぞれの役で再出演した[2]。「時の終わり」でラシロン役を演じたティモシー・ダルトンも再出演を依頼されたが、撮影に参加できず[6]ドナルド・サンプター英語版が演じることとなった。彼は The Wheel in Space(1968年)でエンリコ・カザーリ役を、The Sea Devils(1972年)でリッジウェイ司令官役を演じていた[2]。「魔術師の弟子」「魔法使いの友」でコロニー・サーフ役を、「影に捕らわれて」でヴェール役を演じたジェイミー・リード=クオレル英語版 もスライダー役で再出演した[7]

放送と反応

[編集]

イギリスでの「時空の果てで」のリアルタイム視聴者数は447万人、番組視聴占拠率は20.0%を記録した[8]。Appreciation Index は82であった[9]。タイムシフト視聴者を加算すると最終合計視聴者数は617万人に達した[10]

批評家の反応

[編集]
専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典評価
The A.V. Club英語版A-[1]
ペースト9.0[11]
SFX3.5/5stars[12]
TV Fanatic3.2/5 stars[13]
IGN9.3[14]
ニューヨーク・マガジン5/5stars[15]
ラジオ・タイムズ5/5stars[16]

「時空の果てで」は批評家から肯定的にレビューされた。

デジタル・スパイ英語版のモーガン・ジェフェリーは「いくつかの点ではスリリングで心を打った」と述べたが、「人々の記憶に残るであろう不安定なクライマックスであり、残念ながらエピソードの多くの、そして様々な良い点に影を落としてしまうことになりかねない」と批評した[17]デン・オブ・ギークのサイモン・ブリューは「首尾一貫していて、オタクっぽく、時に素晴らしく、時に少しイライラしながらも、常に見応えのあるテレビ作品」だったと主張した[18]インデペンデント紙のエイミー・バーンズは、情緒的でユーモラスなエピソードだが、起きていることの半分しか理解できなかったとコメントした[19]

なお、全ての批評家が肯定的だったわけではない。Cult Fix のジョン・ハッセーはクララの再登場を批判し、「『カラスに立ち向かえ』はクララの詩的な結末であり、そこで終わらせておくべきだった。タイミーワイミー[注 1]なナンセンスで引きずるべきではなかった」と述べた。さらに彼は第9シリーズのストーリー・アークであったハイブリッド問題が解決されていないことを批判し、「シリーズにほとんど寄与せず、純粋な憶測以上に壮観なものは何もなかった。我々は本来のスタート地点に戻ってしまった」とコメントした[20]

注釈

[編集]
  1. ^ 時間が複雑に交差している様。第3シリーズ「まばたきするな」で登場した概念であり、たびたび劇中で取り上げられる。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d Wilkins, Alasdair (2015年12月5日). “Doctor Who trades epic for personal in a poignant finale”. The A.V. Club. 2015年12月6日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i Hell Bent: The Fact File”. BBC. 2015年12月6日閲覧。
  3. ^ Kyle Anderson (2015年12月5日). “DOCTOR WHO REVIEW: ‘HELL BENT’”. The Nerdist Podcast. 2018年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月7日閲覧。
  4. ^ a b Pete Dillon-Trenchard (2015年12月5日). “Doctor Who Season 9 Finale: Hell Bent Viewing Notes”. デン・オブ・ギーク. 2017年11月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月7日閲覧。
  5. ^ Dan Martin (2015年12月5日). “Doctor Who, series 35, episode 12 – Hell Bent”. theguardian.com. 2020年10月7日閲覧。
  6. ^ Radio Free Skaro #533 – The First Second of Eternity” (MP3) (2016年6月12日). 2016年6月19日閲覧。
  7. ^ Jami Reid-Quarrell”. インターネット・ムービー・データベース. Amazon.com. 2020年10月7日閲覧。
  8. ^ Ben Lee (2015年12月6日). “UK TV ratings: Doctor Who ends the series with 4.5 million viewers”. Digital Spy. 2020年10月7日閲覧。
  9. ^ Hell Bent – AI:82”. Doctor Who News (2015年12月7日). 2020年10月7日閲覧。
  10. ^ Doctor Who Series 9 (2015) UK Ratings Accumulator”. doctorwhotv.co.uk (2016年4月18日). 2020年10月6日閲覧。
  11. ^ Mark Rozeman (2015年12月6日). “Doctor Who Review: "Hell Bent"”. ペースト. 2020年10月7日閲覧。
  12. ^ Ian Berriman (2015年12月5日). “Doctor Who S9.12 – 'Hell Bent' review”. GamesRadar+. 2020年10月7日閲覧。
  13. ^ Kathleen Wiedel (2015年12月6日). “Doctor Who Season 9 Episode 12 Review: Hell Bent”. TV Fanatic. 2020年10月7日閲覧。
  14. ^ Scott Collura (2015年12月6日). “Doctor Who: "Hell Bent" Review”. IGN. 2020年10月6日閲覧。
  15. ^ Ross Ruediger (2015年12月5日). “Doctor Who Season Finale Recap: Duty of Care”. Vulture. 2020年10月7日閲覧。
  16. ^ Patrick Mulkern (2015年12月5日). “Doctor Who Hell Bent review: a superb, satisfying finale that opens a well of sorrow”. ラジオ・タイムズ. 2018年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月7日閲覧。
  17. ^ Morgan Jeffery (2015年12月5日). “Doctor Who series 9 finale review: 'Hell Bent' is emotional and exhilarating but fumbles Clara's exit”. Digital Spy. 2020年10月7日閲覧。
  18. ^ Doctor Who: Hell Bent Review (Spoiler Free)”. デン・オブ・ギーク (2015年12月2日). 2020年10月7日閲覧。
  19. ^ Amy Burns (2015年12月6日). “Doctor Who, Hell Bent, review: Four-and-a-half billion years later, series reaches emotional finale”. インデペンデント. 2020年10月7日閲覧。
  20. ^ John Hussey (2015年12月7日). “Doctor Who: 912 "Hell Bent" Review”. cultfix.co.uk. 2020年10月7日閲覧。

外部リンク

[編集]
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy