コンテンツにスキップ

青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 青少年ネット規制法
法令番号 平成20年法律第79号
種類 経済法
効力 現行法
成立 2008年6月11日
公布 2008年6月18日
施行 2009年4月1日
主な内容 有害情報からの青少年保護・フィルタリングの義務
関連法令 電気通信事業法プロバイダ責任制限法出会い系サイト規制法など
条文リンク 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律 - e-Gov法令検索
ウィキソース原文
テンプレートを表示

青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(せいしょうねんがあんぜんにあんしんしてインターネットをりようできるかんきょうのせいびとうにかんするほうりつ)は、「インターネットにおいて青少年有害情報が多く流通している状況にかんがみ、青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得に必要な措置を講ずるとともに、青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの性能の向上および利用の普及その他の青少年がインターネットを利用して青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための措置等を講ずることにより、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにして、青少年の権利の擁護に資すること」を目的としている、日本法律参議院において2008年(平成20年)6月11日に可決・成立し、施行は2009年4月1日。3年以内の見直し規定が置かれている。青少年ネット規制法青少年有害情報規制法などの略称で呼ばれている。

概要

[編集]

実際に成立した法律は、携帯電話会社に青少年(18歳未満)のものに携帯電話インターネット接続役務を提供する際に青少年有害情報フィルタリングサービスを提供することを、保護者が利用しない旨を申し出ない限り義務づけ(17条)、プロバイダに対し、利用者が求めがあれば青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスを原則として提供する義務を負わせている(18条)。なお、これらの義務に刑事罰は設けられていない。

さらに、サーバー管理者に対し、青少年有害情報について青少年による閲覧ができないようにするための措置をとるよう努力義務が規定された(21条)。

同時に総務大臣及び経済産業大臣の登録を受けたフィルタリング推進機関がフィリタリングソフトの調査研究や普及啓発、技術開発の推進を行うこととされている(24条)。

自民党案では、ウェブサイトの管理者がウェブページ内に有害情報を発見した場合に、自主的に削除するか18歳未満の少年青年等が参加できない会員制への移行、あるいはフィルタリングソフトによるアクセス制限の対象として申請する、といった対応を促す。また、プロバイダ携帯電話各社、インターネットカフェにはフィルタリングサービスなどにより青少年に有害情報を閲覧させないようにすることを義務づけ、違反した場合は6ヶ月の懲役刑および100万円の罰金などの罰則規定も設けるとしていた。

自民党の法案名は『青少年の健全な育成のためのインターネットの利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案』で、青少年特別委員会の委員長高市早苗などが中心になって2008年の法案成立を目指していた。民主党の法案名は『子供が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案』だった。

経過

[編集]

インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議

[編集]

法律では、内閣府にインターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議が設置され青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画の策定を行うことなどとされた。

自民党案では、「青少年健全育成推進委員会」(最大5人)を内閣府に設置し、これに青少年有害情報のより具体的なガイドラインの策定を委ねるとしていた。

中心的な推進者の一人で、高市早苗衆議院議員は、同委員会を、各省庁や政党から独立した独立行政機関として設置するとし、具体的には、「指定青少年有害情報紛争処理機関」として異議申し立て機関を設置し、これに警察庁の委託によりインターネット協会が管理・運営しているインターネット・ホットラインセンターを想定しているとしている[29]

有害情報の定義

[編集]

自民党案

[編集]
  1. 人の性交等の行為又は人の性器等の卑わいな描写その他の性欲を興奮させ又は刺激する内容の情報であって、青少年に対し性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼすもの
  2. 殺人、傷害、暴行、処刑等の場面の陰惨な描写その他の残虐な行為に関する内容の情報であって、青少年に対し著しく残虐性を助長するもの
  3. 犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為、自殺又は売春の実行の唆し、犯罪の実行の請負、犯罪等の手段の具体的な描写その他の犯罪等に関する内容の情報であって、青少年に対し著しく犯罪等を誘発するもの
  4. 麻薬等の薬物の濫用、自傷行為その他の自らの心身の健康を害する行為に関する内容の情報であって、青少年に対し著しくこれらの行為を誘発するもの
  5. 特定の青少年に対するいじめに当たる情報であって、当該青少年に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるもの
  6. 家出をし、又はしようとする青少年に向けられた情報であって、青少年の非行又は児童買春等の犯罪を著しく誘発するもの

反対意見

[編集]

この法案に対しては、2008年4月22日から23日にかけて複数のグループにより反対ないし慎重な対応を求める声明や自主的な取り組みについての情報等が公表されている[30]

脚注

[編集]
  1. ^ 平成14年度世論調査 2002年10月21日更新 - 児童の性的搾取に関する世論調査 - 内閣府大臣官房政府広報室
  2. ^ 平成19年度特別世論調査 2007年10月25日更新 - 有害情報に関する特別世論調査 - 内閣府政府広報室
  3. ^ インターネットの利用による青少年有害情報の閲覧防止等に関する法案の骨子を議論 内閣部会・青少年特別委員会合同会議
  4. ^ ネット規制にばく進する自民党 「有害情報」を流せば懲役刑も|経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”|ダイヤモンド・オンライン
  5. ^ 民主党:子どもの安全・安心のインターネット利用へ 環境を整備する法案骨子示す
  6. ^ 第169回国会 議案の一覧
  7. ^ 衆議院TV-平成20年6月6日 (金)会議名:青少年問題特別委員会
  8. ^ 青少年問題委員会ニュース - 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案(青少年問題に関する特別委員長提出、衆法第30号)
  9. ^ 衆議院TV-平成20年6月6日 (金)会議名:本会議
  10. ^ 本会議開会情報 - 平成20年 6月 6日 金 午後1時00分
  11. ^ “青少年ネット規制法案”が衆議院で可決
  12. ^ 楠正憲:「青少年ネット規制法」衆院通過 実効性に疑問、厳格化懸念も (1/2) - ITmedia News
  13. ^ 参議院インターネット審議中継 -ビデオライブラリ 会議検索- 開会日:2008年6月10日 (火)会議名:内閣委員会
  14. ^ 議案審議情報-青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案
  15. ^ 参議院会議録情報 第169回国会 内閣委員会 第20号
  16. ^ 委員会・調査会質疑項目 - 第169回国会 内閣委員会平成20年6月10日(火) 第20回
  17. ^ 会議の経過 内閣委員会 平成20年 6月10日 - 第二十回
  18. ^ 参議院インターネット審議中継 -ビデオライブラリ 会議検索- 開会日:2008年6月11日(水)会議名:本会議
  19. ^ 参議院会議録情報 第169回国会 本会議 第26号
  20. ^ 会議の経過 - 本会議の審議経過情報 平成20年 6月11日 - 日程第一二
  21. ^ 投票結果 - 第169回国会2008年 6月 11日投票結果 - 日程第12 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案(衆議院提出)
  22. ^ “青少年ネット規制法”が成立、携帯事業者にフィルタリング義務付けなど
  23. ^ パッチワークのインターネット法制―有害サイトとネット販売への規制が成立(1) | 社会・政治 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
  24. ^ 委員名簿 青少年問題に関する特別委員会
  25. ^ 委員会調査会等情報 - 委員の名簿 平成19年10月22日現在
  26. ^ 委員会調査会等情報 - 委員の写真 平成19年10月22日現在
  27. ^ 有害サイト対策法案の成立に当たって(談話)
  28. ^ インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進準備室の設置について
  29. ^ 自民党「有害ネット対策」 高市早苗議員に聞く - OhmyNews:オーマイニュース
  30. ^ 「青少年インターネット規制法案」にヤフーとマイクロソフトと楽天などが共同で「反対」を表明 - GIGAZINE

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy