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JR西日本271系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
JR西日本271系電車
はるか」で運用される271系電車
(2023年12月8日 大正駅
基本情報
運用者 西日本旅客鉄道
製造所 近畿車輛
製造年 2019年
製造数 18両(2020年3月14日現在)
運用開始 2020年3月14日[1][2]
投入先 はるか
主要諸元
編成 3両[2](0.5M方式で全車電動車)
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V
架空電車線方式
最高運転速度 130 km/h[3]
車体 アルミニウム合金
台車 WDT67・WTR249B・WTR249C
主電動機 かご形三相誘導電動機
駆動方式 WN駆動方式
制御方式 フルSiC-MOSFET素子VVVFインバータ
WPC16(1C2M)
制動装置 MBS-A 全電気指令式電空併用方式
保安装置 EB-N(デッドマン装置)ATS-SWATS-P[3]
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271系電車(271けいでんしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)の直流特急用車両2020年令和2年)3月14日から運用を開始した[1][2]

概要

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関西国際空港大阪京都滋賀県南部を結ぶ特急はるか」は、運行開始以来281系でのみ運転されてきた。同形式は6両編成を基本とし、多客期など必要に応じて3両の付属編成を増結した9両編成での運転を行っていたが、インバウンド需要の増加から「はるか」の利用客増への対応が問題となっていたことや、2020年(令和2年)夏の東京五輪2025年(令和7年)の大阪・関西万博など国際的な大型イベント等の開催でさらなる利用拡大が想定されることから、JR西日本は新たに60億円を投じて「はるか」増結用車両の増備を行い、全ての列車を9両編成で運行することを決めた[4]。これにより、1列車あたりの座席数は1.5倍になる[5][6][3][7]

増備に際し281系の製造から既に25年経過しており、281系に増結させることを前提とした新設計車両を製造することになったもので、3両編成×6本の計18両が製造された。

281系では2019年(平成31年)1月から基本編成に「ハローキティ」のラッピングが順次行われているが、本形式は全編成にハローキティのラッピングが行われている[8]

構造

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車体

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同社の287系を基本とし、さまざまな改良が加えられた[5]。製造時は3両編成を基本としつつ、6両編成も組成可能な設計となっている[7]

外観では287系の形状を基本としているが、287系とは異なり運転台上部には前照灯が設置されていないほか、281系の特徴である前面貫通扉腰部をへこませた「インバースデザイン」を受け継いでいる。287系と同様にダブルスキン構造も取り入れている[9]。白をベースに屋根部分を濃いグレー、裾部分をブルーというデザイン、窓横などには「スクエアドット」と呼ばれる青色の模様なども281系から継承している。281系との併結時の一体感を感じさせるとともに、南紀方面に向かう特急「くろしお」との誤乗車を防ぐため、開発段階でホームに居てもはるかであることが一目で判るように配慮したという[5][6][7][10]。なお、281系にある屋根のJRマークは無い。

前面は287系同様の両開き貫通扉を備えているが、営業運転で併結する281系の貫通扉は非常用のため、幌を利用した車内通り抜けは実施されていない[6]

287系や225系などに導入されているオフセット衝突対策や衝撃吸収構造の採用などにより車体構造を強化している。ダブルスキン構体の一部の板部材に、切り欠きを入れることで衝撃吸収の効果を高めるフォールディングスリットを取り入れ、さらにガイド板を追加したことで衝突時の運転士の保護能力と安全性を高めている[11]

EB-N装置の採用、ATS-SWとATS-Pの機器の二重化など統合型保安車上装置のシステム設置により、安全に関する対策も強化されている[11][12][3][7]

走行機器

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主電動機はPGセンサレスの全閉式かご形三相誘導電動機[13]である。排風絞りはない[13]。走行時の車内での低騒音化にも貢献している[9]

主回路装置は323系に準じたフルSiC-MOSFET素子適用し、インバータ損失低減と高周波変調による主電動機の省エネ化を図っている。メタル線指令とデジタル伝送を組み合わせたシステムを採用し、281系との併結運転を可能にしている[9][14][9]の WPC16形VVVFインバータ制御装置 を搭載し、補助電源(SIV)と一体箱構成とした[13]。ブレーキ制御方式は全電気指令式、システムは287系に準じており[13]、各台車付近に MBS-Aブレーキ作用装置 を1台搭載する。

電動空気圧縮機は、従来のスクリュー式に代わり、スクロール式をクモハ271形に1台搭載している[13]

集電装置323系などで使用している直流用シングルアーム式パンタグラフをクモハ271形の連結寄りに1基設置している[13]

台車は WDT67形台車(動力台車)をクモハ271形とモハ270形の後位側とクモハ270形の前位側に、WTR249C形台車(付随台車)をクモハ271形の前位側とクモハ270形の後位側に、WTR249B形台車(付随台車)をモハ270形の前位側に装着する[13]

ブレーキ装置は、常用ブレーキ使用時に、回生ブレーキと車両に搭載されているデジタル伝送装置が連動する仕組みとなっている。これにより編成基準軸速度のデータを基準にして、回生ブレーキを駆使した滑走制御が行われる[9]。287系で採用された駐車ブレーキが備わっている[9]。耐雪ブレーキ・抑速ブレーキなど各種ブレーキは287系と同様、メタル線による引き通しと伝送指令で制御されるようになっている[9]

車内

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車内のカラーリングにおいては、華やかさや上品さをコンセプトとした281系を受け継ぎつつ、数々の新技術も導入された。多言語表示[注 1]にも対応した液晶ディスプレイ2画面による情報案内装置を設置。JR西日本の在来線車両では初となる、編成内の全ての座席にコンセントの設置を実現した。天井の高さは2,220 mmと、287系に比べて70 mm高くなった。荷物置き場は、従来デッキ部分に3段式で設置されていたものを、大型スーツケースを考慮して2段式となり、セキュリティも考慮し客室内に移した。客室、荷物置場、デッキなど、セキュリティ強化のため1両あたり8 - 9台の防犯カメラを搭載している。車いす対応の大型トイレを備え、洗面台には鏡にLED照明が埋め込まれ、自動で水やハンドソープが出るようになるなど、快適性の向上が見られる。フリーWi-Fiによるインターネットの接続も可能[5][6][15][16]

形式・編成

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287系同様、0.5M方式を採用した全電動車編成としている。前述のとおり、2019年(令和元年)時点では281系への増結用の付属編成のみが製造されている。グリーン車は設定されておらず、普通車のみで組成される。281系6両編成の関西空港方に併結する運用のため、野洲方先頭車のクモハ270形は営業運転で先頭に立つことはない。

  • クモハ270形(M'c)
制御電動車。定員34名[11]。制御装置・補助電源装置を備える[11]。車椅子対応座席(2席)[11]、後位側に多機能トイレ・男性用小便所・洗面所を備える[9]
  • モハ270形(M')
中間電動車。定員44名[11]。制御装置・補助電源装置を備える[11]。前位側に洋式トイレ・男性用小便所・洗面所を備える[9]
  • クモハ271形(Mc)
制御電動車。定員44名[11]。制御装置・補助電源装置・電動空気圧縮機・集電装置(1基)を備える[11]
編成表[17][11]
← 野洲・京都
関西空港 →
形式
クモハ270
-#0
(M'c)

モハ270
-#0
(M')
 <

クモハ271
-#0
(Mc)
定員 34 44 44
機器 V・SIV V・SIV V・SIV・CP
凡例
  • V:制御装置
  • SIV:補助電源装置
  • CP:電動空気圧縮機

編成表

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2024年(令和6年)4月1日現在[18]

← 野洲・京都
関西空港 →
編成
番号
クモハ
270
モハ
270
クモハ
271
落成日 備考
HA651 1 1 1 2019/07/11
HA652 2 2 2
HA653 3 3 3 2019/07/31
HA654 4 4 4
HA655 5 5 5 2019/09/03
HA656 6 6 6

運用

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試運転を行う271系
(2019年12月14日 島本駅)

2024年(令和6年)4月1日現在、全車吹田総合車両所日根野支所に配置されており[18]、281系6両編成と併結の上で関空特急「はるか」として東海道本線琵琶湖線JR京都線)・大阪環状線阪和線関西空港線などで運用されている[16]。2031年(令和13年)開業予定のなにわ筋線を走ることを見据えての設計がされており、将来的な281系の置き換えも可能な設計となっている[7]

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による利用者の減少を受け、2020年(令和2年)4月1日から当分の間、「はるか」を6両編成で運行することになり[19]、元々3両編成単体での運用がなかった本形式は運用から外れた。その後、翌2021年(令和3年)3月13日のダイヤ改正より一部の列車で9両編成の運転が再開され、本形式も運用に復帰した。

2022年(令和4年)8月6日には、団体臨時列車として伯備線へ初入線した[20][21]

沿革

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吹田総合車両所日根野支所鳳派出所で留置されている271系
  • 2019年(令和元年)
    • 6月19日:社長会見で特急「はるか」へ新型車両を投入を発表[4]
    • 7月10日:報道公開が実施される[6]
    • 7月11日:HA651・HA652編成が出場し、試運転開始[22]
    • 7月31日:HA653・HA654編成が出場し、試運転開始[23]
    • 9月3日:HA655・HA656編成が出場し、試運転開始[24]
  • 2020年(令和2年)
  • 2021年(令和3年)
    • 3月13日:1・2・4・15号が9両編成で運転されることになったため運用を再開[25]
    • 11月23日:271系6両を使用した「271系新型ハローキティはるかで行く 車両基地入線日帰りの旅」実施[26]。翌年1月9日2月12日にも追加で実施[27][28]
  • 2022年(令和4年)
    • 8月6日 - 8月7日:271系6両を使用した岡山デスティネーションキャンペーン「ハローキティと一緒に『ハローキティ はるか号』で行く 倉敷・尾道・福山」実施[20][21]

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b 2020年3月14日にダイヤ改正を実施します (PDF) - 西日本旅客鉄道、2019年12月13日
  2. ^ a b c d 271系が営業運転を開始」-『railf.jp(鉄道ニュース)』、交友社(2020年3月16日)
  3. ^ a b c d JR西日本271系「はるか」増結用の新型車両を報道公開 - 写真97枚」-『マイナビニュース』、マイナビ(2019年7月10日)
  4. ^ a b 特急「はるか」へ新型車両を投入します! ~両数が増えて便利に快適にご利用いただけます~ - 西日本旅客鉄道(2019年6月21日)
  5. ^ a b c d 関空特急「はるか」の新型271系が登場! 現行281系と連結、全席にコンセント設置」-『乗りものニュース』、メディア・ヴァーグ(2019年7月10日)
  6. ^ a b c d e 特急「はるか」新型車両『271系』の報道公開に行ってきました」-『鉄道チャンネル(鉄道ニュース)』、エキスプレス(2019年7月10日)
  7. ^ a b c d e 関空特急に新車、JR西が見据える「はるか」先 インバウンド急増に対応、先行きに慎重さも」-『東洋経済オンライン』、東洋経済新報社(2019年7月12日)
  8. ^ 地域とみんなをつないで結ぶ。「ハローキティ新幹線 展」関連イベント 271系「ハローキティ はるか」も先行展示 - 西日本旅客鉄道(2020年2月20日)
  9. ^ a b c d e f g h i 田邊尚記・若杉景祐(西日本旅客鉄道 鉄道本部 車両部 車両設計室)・津田康宏(西日本旅客鉄道 近畿統括本部 吹田総合車両所日根野支所)「271系特急形直流電車」-『鉄道ファン』2019年11月号、P.45
  10. ^ JR西日本 特急「はるか」新型車両投入へ 2020年春ごろを予定」-『Yahoo!ニュース(the page)』LINEヤフー(2019年6月21日、2021年4月14日時点でのアーカイブ)
  11. ^ a b c d e f g h i j 田邊尚記・若杉景祐(西日本旅客鉄道 鉄道本部 車両部 車両設計室)・津田康宏(西日本旅客鉄道 近畿統括本部 吹田総合車両所日根野支所)「271系特急形直流電車」-『鉄道ファン』2019年11月号、P.43
  12. ^ JR西日本、関空アクセス特急「はるか」に新車両271系導入。既存車両へ3両増結。全座席に電源装備」-『トラベルwatch』、インプレス(2019年6月21日)
  13. ^ a b c d e f g 田邊尚記・若杉景祐(西日本旅客鉄道 鉄道本部 車両部 車両設計室)・津田康宏(西日本旅客鉄道 近畿統括本部 吹田総合車両所日根野支所)「271系特急形直流電車」-『鉄道ファン』2019年11月号、P.46
  14. ^ 省エネルギー化に貢献するフルSiC適用高効率8極PMSM駆動システムの開発」-『日立評論』第102巻4号、日立製作所(2020年)
  15. ^ 特急「はるか」に新型車両を投入 営業開始時期は2020年春ごろ」-『鉄道チャンネル(鉄道ニュース)』、エキスプレス(2019年6月21日)
  16. ^ a b JR西日本、特急「はるか」の新型車両「271系」を公開。全席にコンセント、Wi-Fiサービス提供」-『トラベルwatch』、インプレス(2019年7月10日)
  17. ^ JR西日本, 271系を報道陣に公開 JR西日本, 271系を報道陣に公開」-『railf.jp(鉄道ニュース)』、交友社(2019年7月10日)
  18. ^ a b c d 『JR電車編成表 2024夏』、P.151
  19. ^ a b 一部臨時列車の運休について (PDF) - 西日本旅客鉄道(2020年3月24日)
  20. ^ a b ハローキティと一緒に「ハローキティ はるか号」で行く 倉敷・尾道・福山 - 日本旅行
  21. ^ a b 271系が伯備線に初入線」-『railf.jp(鉄道ニュース)』、交友社(2022年8月8日)
  22. ^ 271系が試運転を行ない吹田へ」-『railf.jp(鉄道ニュース)』、交友社(2019年7月11日)
  23. ^ 271系HA653編成・HA654編成が登場」-『railf.jp(鉄道ニュース)』、交友社(2019年8月2日)
  24. ^ 271系HA655編成・HA656編成が登場」-『railf.jp(鉄道ニュース)』、交友社(2019年9月4日)
  25. ^ 2021年春ダイヤ改正について (PDF) - 西日本旅客鉄道(2020年12月18日)
  26. ^ 【JR西日本×日本旅行 共同企画】鉄道の魅力が満載! 「271系新型ハローキティ はるかで行く 車両基地入線 日帰りの旅」発売について (PDF) - 西日本旅客鉄道・日本旅行(2021年10月26日)
  27. ^ 【JR 西日本×日本旅行 共同企画 ご好評につき継続実施決定!】鉄道の魅力が満載!「271系新型 ハローキティ はるかで行く 車両基地入線 日帰りの旅」発売について (PDF) - 西日本旅客鉄道・日本旅行(2021年12月8日)
  28. ^ JR西日本×日本旅行共同企画 271系新型ハローキティはるかで行く 車両基地入線日帰りの旅 - 日本旅行

参考文献

[編集]
  • 鉄道ファン2019年11月号(No.703)交友社
  • ジェー・アール・アール『JR電車編成表 2024夏』、交通新聞社(2024年5月24日、ISBN 978-4-330-02824-8

関連項目

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外部リンク

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